思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

スタンドのような“ヒトデナシ”、顔からアイデンティティまで奪ってしまう無貌など、SF(ファンタジー?)的な設定を導入し、舞台まで藤宮(とうきょう)など、日本的なものにしたミステリー。
てっきりファンタジーか、せいぜい伝奇小説だと思っていたら、予想外に本格ミステリしていたので驚いた。これは逆にカバーデザインの失敗例だと思う。本格ファンは確実にスルーしそうな体裁だからだ。
終わってみれば主人公である探偵助手が中二的なやつで、探偵が忠告する通り、死んでしまえば良かったのに…と思わせられた。結局横溝正史ばりに、連続殺人は止められない、似非名探偵ではあるのだが。

無貌伝 ~双児の子ら~ (講談社ノベルス)無貌伝 ~双児の子ら~ (講談社ノベルス)
望月 守宮

講談社 2008-01-09

松尾たいこのカバーイラストのシリーズははっきり言って好きじゃないのだが、本作に限ってはジュブナイルということもあって、意外と内容に合っている。OK!
アカデミーの入学試験のための面接試験(卒論の発表会みたいなもの)というかたちで、ほぼ密室劇、というのも凄い。
とある未来史のひとときから見た過去の歴史を語る、という体裁をとっているのがまだろっこしいなあ…と思っていたら、意志とは?心とは?中国人の部屋などの哲学問答あり、最後は意外や意外な終わりかたありと、良質な広義のSF/ミステリーといえる。読書対象年齢の幅広さなどと合わせて、『アルジャーノン』に通じる佳作。

創世の島創世の島
バーナード ベケット Bernard Beckett

早川書房 2010-06