こういう本が読みたかったのだ。「コミンテルン」で検索しても、アマゾン、図書館ともになかなかヒットせずにいて困っていたのだが。
本書は、スターリンのコミンテルンが、いかに日本のあちこちに浸透して、日本を共産革命に導いたかが記されている。
著者は最初は官僚として共産主義者を取り締まる側にいたのだが、のちに衆議院議員に。本書が刊行されたのは昭和25年という占領下だったので、当然(?)発禁処分となったようだ。私が読んだのは復刊された昭和62年版。今年、さらに当時の書名で再復刊されたようでめでたい。こういう本こそもっと読まれるべきなのだ。
本書は、そもそも上念・倉山の対談本で名著として推薦されていたのだが、読めば、彼らの本で言われている第二次大戦の勝者は共産党であることがよく分かる。悪く言えばネタ本といっても過言ではない。
共産党といえば現在の中共のように、自分たちがやったことを他人にまるごと転嫁するのがお家芸だが、東京裁判での「共同謀議」も、コミンテルンがやったことをまるごと日本政府におしつけた形であるといえる。本書では、終戦後のことはほとんど書かれていないのが残念ではある。ソ連が停戦後に侵攻したことや、東京裁判に共産党がどういう意向と手を伸ばしたかについても書いて欲しかったところだが。
とりあえず、共同謀議の主犯かつ実行犯ともいえる人物・尾崎秀実をメインに書かれている。
「松岡外相が日独伊同盟締結の余勢をかって独伊を訪れ、帰途モスクワに立寄って、日ソ中立条約を締結した真意は遂に永久に不明である。(略)尾崎秀実と最も親しかった西園寺公一が、松岡外相就任と同時にその政務嘱託となり、訪欧の旅に同行したことも何等かの意義なしとしない。」
本書には岸信介(もちろん当時は首相ではない)が序文を寄せおり、そこには本書の内容が集約されている。
「支那事変を長期化させ、日支和平の芽をつぶし、日本をして対ソ戦略から、対米英仏蘭の南進戦略に転換させて、遂に大東亜戦争を引き起こさせた張本人は、ソ連のスターリンが指導するコミンテルンであり、日本国内で巧妙にこれを誘導したのが、共産主義者、尾崎秀実であった(略)東京裁判の被告席に座るべき真の戦争犯罪人は、スターリンでなければならない。然るに、このスターリンの部下が、東京裁判の検事となり、判事を務めたのだから、まことに茶番というほかない。」
しかし、近衛文麿など権力者に近づき、その思想を吹き込む尾崎の手法を見ると、もともとは改憲論者でもあったルーピー鳩山がああなったのも、同じ手口であったのかも…。
大東亜戦争とスターリンの謀略 戦争と共産主義 (自由選書) 三田村 武夫 自由社 1987-01 |
戦争と共産主義 【復刻版】: 昭和政治秘録 三田村 武夫 竹中 公二郎 歴史の真実を究明する会 2015-06-14 |