思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ヴィシェフラト城攻略戦を描く。
破城槌から投石機、穴掘りまで、さまざまな方法が出てくるのが巧いところ。
城に潜入するも、攻略に失敗し、塔の1つに立てこもる入れ子構造の籠城状態というのも面白い。
今回も潜入部隊の子供が容赦なく射殺される場面や、兵糧攻めで発狂するところ、主人公の少女といえども容赦なく骨と皮だけになるなど、現実をしっかり描いているところが良い。
また、最後にはシャールカがキーとなって戦況を降伏へと導くのだが、ナウシカ的な「そんな都合良くいかへんやろ〜」とならない、ギリギリのところを突いているのが本作の特徴。その前後でリアルな生死を描いているからこそ、だろうか。
ジシュカの側で、彼の目となるサーラのキャラが、見た目からしてもシャールカとかぶっているのがどうかな…と思うが。
また、これだけシリアスな内容なのに、ぬけぬけというか、しゃあしゃあとパロディを入れてくるのが凄い。特に本巻から顕著で、『おそ松くん』のイヤミ、『ガンダム』からは赤鼻(潜水侵入部隊だから?)、ガルマなど、細かいところでは『ハクション大魔王』まで(^_^;)

乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ  : 4 (アクションコミックス)乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ : 4 (アクションコミックス)
大西巷一

双葉社 2015-05-09


『「満洲」の歴史』小林英夫
☆☆☆★
講談社現代新書

立ち位置的にはリベラル的なスタンスでまとめられた満洲史。張作霖爆破が共産党の陰謀だとかいうのは一言もなく、河本大作で確定。参考文献の『紫禁城の黄昏』も完訳版ではなく岩波書店版であるあたりからも、顕著だろう。
とはいえ、満洲史の概略を掴むには適当で、中でも私が最も知りたかった満洲事変についてはこれまで読んだ中で最も分かりやすかった。歴史用語的に、善いもん(関西弁でいうところの)が起こした暴動は事変(変)というのが違和感の正体だったのだ。要するに日本陸軍関東軍)による満洲占領作戦の開始から(成功)終了までのことを指すのだった。

「当時の日本は、戦後復興の過程で外地からの引揚者を受け入れるだけの余裕に乏しかった。そこに日本の総人口の約一割に該当する650万から700万人近い引揚者が帰国したわけだから(略)南米移民に再度出るというケースも希ではなかった。」

戦後にブラジルに行った日本人が多いのはそういう訳だったのだ。

「日本よりいくぶん早く連合国に降伏したイタリアの場合には、外地イタリア人の財産は尊重され、帰国を希望する場合には、動産、不動産の処分が認められていた。」
ところが
ソ連軍は(略)東北にあっ4さまざまな鉄道施設や工場施設、発電所や変電所などを接収し、ソ連領内へと搬出した。その被害額は8億ドルとも20億ドルともいわれている」