『鍋奉行犯科帖』
本格ミステリにも落語にも大阪にも日本史にも詳しい作者だからこそ書けた作品。
大坂を舞台に、食い倒れの町らしく食をテーマにした捕物帖。
とは言っても、『噺が違う』のような広義のミステリーという感じ。短篇によっては本格よりのものもあるし、味付け程度のものもある。山田風太郎の時代小説を思い起こさせるテイストかも。
ほとんど中篇といってもいい作品群で、奉行所メンバーでも、奉行に家老、同心2人に中間、岡っぴきなど、レギュラー登場人物も多いので、メインとなる筋立てはつかみづらい。とはいえ、逆に幅の広さで考えれば、シリーズものとして続けて何冊も読み込むほどに色々なエピソードが広がって楽しめるのかも。
鍋奉行犯科帳 (集英社文庫) 田中 啓文 集英社 2012-12-14 |