思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

大日本サムライガール(9)』
☆☆☆★

アメリカへ渡ってのロビー活動を経て、自民党との大合併および特例法によって総理大臣となって終わり。
肝腎の、独裁者となって日本の戦後体制にお大ナタを振るうところは描かれず。
まるで、『沈黙の艦隊』で、東京湾からニューヨークに向かって出航することころで連載終了されるようなものだ。
同作と同じく、現実の変化によって、つまりは安部政権が誕生して、緩慢すぎるものながらも、正常化への道を歩みだしたことで、本作の意義が薄れたこともあるのだろうか(あとがきでは一切触れていないが)。
まあ、やることは施政方針として繰り返し語っているわけだから、それを描かないのは映画『ガメラ3』と同じスタイルとして、アリっちゃあアリなのだが…。
テーマとしては、20巻くらいかけないと消化できないものだろう。
構想がまとまれば、数年後くらいに「総理大臣編」として再開してほしいところだが…。

大日本サムライガール 9 (星海社FICTIONS)大日本サムライガール 9 (星海社FICTIONS)
至道 流星 まごまご

講談社 2015-01-16


大阪ではお馴染みの料理をテーマにした時代ミステリーシリーズ第2巻。
本作では、普通の短編ならこれで終わり、というところからもうひと展開あるところ。犯人を突き止めたと思ったら、逃亡されたので行方を追ったり、そのあたりが面倒だと感じるか(それは、私です)、面白いと思うかは微妙なところ。
表題作では、上方の演芸事情を描いたかと思わせて、いきなり(とってつけたように?)たこ焼きの誕生秘話で落とすというのが面白い。
ちなみに、ミステリとしてのレベル(謎の難易度)はかなり低めである。

鍋奉行犯科帳 道頓堀の大ダコ 鍋奉行犯科帳シリーズ (集英社文庫)鍋奉行犯科帳 道頓堀の大ダコ 鍋奉行犯科帳シリーズ (集英社文庫)
田中啓文

集英社 2013-08-26

ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む (新潮文庫)ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む (新潮文庫)
須田 慎一郎

新潮社 2010-08-28

『ブラックマネー』須田慎一郎☆☆☆★
新潮社

英語題として『ザ・マフィアマネー』とあるが、ヤクザ絡みのカネの流れだけでなく、いわゆる金融犯罪全般について調べたもの。ただし、振り込み詐欺などの個人相手のものはなく、あくまで組織対組織のもの。


暴力団マネーは普通の投資資金と違って、「損を認めないカネ」である。(略)もし、投資に失敗したとなれば、暴力装置が作動する可能性も高い。そのため、運用などを任されたファンドマネージャーなどは、イリーガルな手を使っても強引に利益を出そうとする。こうした圧力がますます市場を歪め、一般投資家の損は拡大していくことになる。」

暴力団の共生者となるような詐欺師的な金融ブローカーにとっては、素人と元金融マンを寄せ集めただけの新銀行東京など、赤子の手を捻るようなものだつたに違いない。
ド素人集団が中小企業融資に乗り出したこと自体、無謀な話だったのだ。一部には新銀行東京から闇社会へ吸い込まれた資金の総額は五百億円に達するという推計も出されている。」

「広域暴力団は(略)ピラミッド状にいくつもの組織が集まって構成されている。そして、下位の団体はそれぞれ上位の団体へ毎月数十万円から百万円程度の上納金を納めることになっている。(略)その結果、(略)大規模な暴力団の一次団体ともなれば、毎月数億円単位の資金が入ってくる。(略)そのままでは表に出せない。派手に遣えば、たちまち司法・税務当局などに察知され、摘発される可能性が高い。そのため、マネーロンダリングにより、資金の出所を分からなくする必要がある。」