思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

唯識で読む般若心経』
☆☆☆☆

興福寺佛教文化講座で23回に渡って講義されたもの。つまりは口語体なのでわかりやすいが、連続の生徒のレベルが高めの設定でもあるから、初心者向けすぎない、なかなか適度な内容。

「英語は(略)必ず主語をいわなければなりません。だから、話すたびに、アイすなわち「私」という言葉が深層に、すなわち阿頼耶識に薫習し、そのため自我意識がますます強くなっていくわけです。」

「「無」にこだわってしまうと、何もない虚無主義に陥ってしまいます。そこでこの誤りに陥らないためには、「有に似て有に非ず」という意味での無であると唯識的に解釈することが必要です。」
世界は自らの阿頼耶識が生み出したものであるから、
「タバコを捨てる。それは路上を汚くすると同時に、自らの深層心すなわち阿頼耶識を汚すことになるのです。」
という説明は納得できる。だが、他人の存在はどう解釈すればいいのかは、説明されていなかった。もし夢と同じく実態がないなら、親切にする必要もなさそうなのだが…。

「世親は『唯識二十論』のなかで、外界に決して原子は存在しないということを多角的に論証しています。」
これは調べてみたい論説だ。

唯識でよむ般若心経 空の実践唯識でよむ般若心経 空の実践
横山 紘一

大法輪閣 2009-05