思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『めざまし塵劫記』西田知己
☆☆★
東洋書店

塵劫記』といえば江戸時代の有名な和算問題集だが、本書はそれに代表される算術指南書を通して、江戸時代の文化を紹介したもの。期待と異なり、計算問題そのものはない(落語を鑑賞する手助けにもなるのが有り難いのだが)。
したがって引用も、江戸時代の生活トリビアが多い。
「加・減・乗については改めて学習する必要のない人が大勢いた。わざわざテキストを用いて勉強するのは、割り算からという意識だったのである。」

「足のサイズをいう「文」は、2.4センチ。これは一文銭の直径を基準にした、足袋の大きさの単位」

「当時の販売は、節季払いが主流だった。節季払いというのは、盆暮れに代金を回収に行って客に払ってもらう方法のことで、今のボーナス払いのような支払い時期を限定したものに近い。
 そういう売り方を「掛売」といい、(略)このシステムでいう「掛値」とは、商品の価格に後払いの手数料を加算した値段のことだった。(略)「掛値なし」とは、掛け売りをせずに現金で定価販売することをいう。」