思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ノルンの永い夢』読了

平谷美樹
☆☆☆★
早川書房
基本的に時間SFは、歴史小説との区分が曖昧というか、本作のように第二次大戦前のドイツが舞台だったりすると、ドイツ、SFは読みたくない、と敬遠してしまう。
読み始めれば、過去編の主人公は日本人科学者だし、現代編はSF小説家なので、意外とすんなり読み進められた。
本作は歴史改変SFというより、作者あとがきとも合わせると、タイムパラドクスあるいは歴史/事実の混乱・不確実性じたいがテーマ。メタフィクショナルな過去と現在の融合が描きたかっただけ。
オリジナルの本間理論やデザイナー理論も、『宇宙消失』のように科学的裏付け云々よりも、単なる小説的な言い訳、手続き・口実に思える。
で、SF小説として面白いかどうか…。
勢いづいてからは興をそぐことなく読み終えたのだから、楽しめた/面白かったんどろうなあ…。
いや、後に何もテーマ的なものが残らないからなあ…。
テーマ的にも後の『銀の弦』と同じなのだが、こちらのほうがだいぶ読みやすいのは確か。

ノルンの永い夢 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)ノルンの永い夢 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
平谷 美樹

早川書房 2002-11

マンガは変わる “マンガ語り”から“マンガ論”へマンガは変わる “マンガ語り”から“マンガ論”へ
伊藤 剛

青土社 2007-12