明確にシリーズであることがわかる。
主人公たちに加えて、外に出ると雨が降る、という<力>の男が現れる。これ、科学的にはまったく論外な設定で、『ジョジョ』のウェザー・リポートを知っていなければ一笑に付していたところだ。
ハウダニットとしてのトリックはどうでもよく、メインは動機やフーダニットにある。
また、主人公と雨男のひきこもり・いじめに関する描写がかなり長く続くので、そういうのが嫌な人には辛い。
主人公のある種の嫌らしさ(現代的な若者像ともいえるが)や、名探偵ものの決定的リアリズムの欠如(名探偵のもとで続けて事件がおこれば、名探偵こそ真犯人である)などのツッコミが、本シリーズのメイン(裏?)テーマなのかもしれない……というより、そうでないとシリーズを読み終えたところで本を投げるかもしれない(^^;)
火事と密室と、雨男のものがたり (講談社ノベルス) 浦賀 和宏 講談社 2005-07-07 |
戦いにつぐ戦い…なのだが、政治的な動きもきっちり描かれているのも忘れてはならない。海江田の目的のためには、国際政治の変化は絶対に欠かすことはできないのだ。
現実の潜水艦戦ではまずあり得ないような、肉弾戦が頻出するのが特徴だ。中学時代に読んだときは何の違和感もなかったが…。近距離で魚雷が爆発すれば自らもダメージを受けるということと、補給が望めない状況下で魚雷を節約する、という一石二鳥の戦術といえるだろう。
石油タンカーに偽装して艤装したドック艦サザンクロスなどという超兵器があっさり出てくるのも凄い。シーバット建造と同時に密かに進めていたのだろうか。また、これが実際に活躍するのが10巻ごろ、というのがなんとも遠大なプロットのための伏線といえる。
アメリカのシーバット/やまとに対する態度がすぐに変転するあたりも、アメリカの利己主義的転向をしっかりとらえていて興味深いところ。
沈黙の艦隊(3) (講談社漫画文庫) かわぐち かいじ 講談社 1998-03-11 |