思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

許されざる者


☆☆

傑作とされているので期待したのだが、やっぱりイーストウッド映画は合わないのかも。
割と古い映画のせいかもしれないが、ルックも、白茶けていて、80年代みたいだし(私の記憶のイメージ。ほんとの80年代はもっと粗いかも)。
見終えてから、町山氏の解説を聞くと、本作は定番の展開の逆を行った、「アンチ西部劇」というか、「リアル西部劇」みたいな内容らしい。日本で言えば(ちょっと違うのは承知だが)様式美だったチャンバラ時代劇に、リアルを持ち込んだ黒澤明みたいなものか。
そもそも、スタンダードな西部劇を観ていない私に、いきなり変化球が打てるはずもない。『駅馬車』も、スタンダードじゃなさそうだしなぁ。

以下ネタバレ

純粋にひとつの映画として観ると、最初に「引退した伝説の殺し屋」的に登場しておいて、いざターゲットたる保安官のところにきてみれば、何も出来ずにボコられる。最後にはもちろん保安官(敢えて悪者とは書かない。視野狭窄なだけで、彼の言動には、独裁的ではあるが、治安維持のための一部の理がある。アメリカ的な民主主義とは違うけど)を倒すのだが、『ジョン・ウィック』や『イコライザー』はたまた『コマンドー』や『ランボー』みたいな怒りの描写や、カタルシスはない。かと言って、復讐は無意味だ、みたいなメッセージでもない。かと言って、『エクスペンダブルズ』みたいに、傭兵として、任務をこなすだけ、というのでもない。

ファング一家の奇想天外な秘密


☆☆☆★

原題は『THE FAMILY FANG』で、てっきり『家族の牙』かと思いきや、『ファング家』だった。でも、見終えた後で私が邦題をつけるなら、『フェイク・ファミリー/リアル アート』かな。
フラッシュモブの逆というか、リアルドッキリカメラを現代アートとしてやり続ける夫婦と、それに翻弄される姉弟がダブル主人公。落ち目の女優である姉のほうをニコール・キッドマンが演じる。
YouTubeのサムネからは、ブラックコメディかと思いきや、毒親に翻弄される子供の親離れを描いた、地に足のついたヒューマンドラマだった。終盤には、両親が失踪するというサスペンスが、伏線と共に解消されるし。よくできた構成なのに、邦題で損をしている。

以下ネタバレ

両親が失踪したが、車からは血痕があり、殺されたのか否かというサスペンスになる。
それを探さないで、親離れしようという弟と、親を匿う関係のある人を探す姉。そこから、両親所在以上の謎が明らかになる。
序盤に出てきた『親を殺せ』の歌が重要か手がかりとして再登場したり、

スーツケース・マーダー


☆☆

ライフタイム製作の映画は、女性が主人公であることと、妙に色彩が明るくて彩度が高い画面である。
スーツケースに詰められて発見された死体から始まるので、ミステリーまたはサイコ・サスペンスかと思いきや、ある女性のドラマ。
主人公というか、主役の女優は、露骨に整形美女というか、作り物っぽい顔で、これが狙っているのか、ターゲットたる観客受けを狙ったのかが、日本のおっさんたる私にはよく分からない(@_@)
本作は、ジャガモンド斉藤的に言うなら、「言わんこっちゃない映画」である。後半3割くらいが裁判ものになるのには驚いた。でもまあ、あんまり法廷ものとしては面白くないんだけど。ミステリーとして面白くするなら、法廷シーンから始めるべきところだが、製作スタジオというか、ターゲット的に、それに至る女性の感情を描かないとないいけないから、こうなるのはしょうがないのかもしれない。
ネタバレなしで、最後まで観た感想を言えば、「知らんがな」というか、「ミステリーではなく再現ドラマやん」という感じ。勝手にミステリーだと思って観た私が悪いのだが。

以下ネタバレ

本作は、浮気性だという周囲からの警告を無視して結婚したおっとに浮気され、自分も浮気した挙句、夫を殺したという、自業自得というか、まさに「だから言わんこっちゃない」という、よくある知情のもつれ殺人事件に過ぎない。まあ、実話を元にした話だから、そんなもんかもしれないけど。
だからこそというか、いちおう、実際に彼女が犯人なのかどうかは、どちらともとれる結末にはしている。限りなく黒に近いグレー。判決としては、百一歳までの懲役が出ているそうだが(アメリカはいいねえ。日本なら、夫殺しだけならら懲役20年もいかないかも知れない)、映画としては断定していない。
この、裁判や弁護士への嘘の発言としか思えない描写と、先述した、顔が整形っぽいのが、妙にリンクするので、これと演出上の仕掛けかと思ったのだ。
夫の浮気だけならともかく、自分も職場の医者と浮気し返してるんだから、同情の余地もないしねぇ。特に特異な経緯でもないし、映画化する意図がどこにあったのか? と言いたくなる。
まあ、ミステリー的に、冒頭のスーツケース発見では、中身をしっかり見せないので、彼女が殺されたと思わせて、実は夫だった、というツイストはあるのだが、まあミステリーに慣れたひとなら、充分予想できるし。そもそも浮気性の夫が殺されても、同情する(衝撃を受ける)こともないから、効果を上げていない。

ジョセベル


☆☆☆

原題も同じ。『バイオハザード』のミラ・ジョボビッチみたいな人が主役。
交通事故で夫とお腹の子供を亡くして車椅子生活となり、実家に帰ってきて、父親と暮らすことになった主人公。幼い時に亡くなった母の片身のビデオテープを見つけて、怪奇現象が起こる。
パラノーマル・アクティビティ』みたいな感じだが、結構早く幽霊が実体化してアタックしてくる。Jホラー的なテーマなのに、怖がらせ方は、お化けが危害を加えるアメリカ式。
車椅子だから自由に見に行くことも、逃げることもままならない、というのは、『』(プレシディオチャンネルの、引っ越し先の隣りに住む下半身付随の少年のもとに遊びに行く話)もそうだったが、優れた設定だと思う。
助けるヒーローも、抱き抱える必然性があるし。ただ、このヒーロー役というのが、幼なじみなのはいいとして、既婚者なのはどうかと思う。特にそちらの過程が突っ込んで描かれないので、そっちの妻子のほうは、完全に裏切られていて、激おこやん(´Д`) 主人公を助けて、と感情移入できないよ。
ラストは、ちょっと予想と違った収束で、論理的には矛盾があるがらどんでん返しとしてはまあ、アリなのかなぁ……。

以下ネタバレ

暗くてよく見えないが、主人公を襲う怪物は黒人女性だった。主人公の母親は、お手伝いの黒人男と密通して、生まれた子供を殺した。同時期にとった養子が主人公というわけだ。密かに森の中に葬られた赤ちゃんが、なかったことにされた自分の人生を返せと、恨みで襲って来ていた、というのが真相。当然、それを主人公と、幼なじみが撃退するのだが、逆恨みと言えなくもないが、幽霊の気持ちも充分分かるので、両手を上げて喜べない。幼なじみも、純粋な義侠心ならいいのに、「愛してる」とか言わせてるし。これじゃ、妻子から呪われても文句言えんぞ(´Д`)
ただ、ラストに「我こそジョセベル」的な宣言で終わる切れ味は良かった。

ザ・ハウス 呪縛のAIマンション


☆☆★

あまりにもテキトーな邦題な上、原題も、章題がちょこちょこ出てくるので、よく分からなった。
元々、食肉工場だったところに建てた最新式のマンション。電気やテレビやメールなども、アレクサ的な、音声制御だ。まあ、AIとか言うほどハイテクじゃないけど、少なくとも原題にはそんな単語はなかった気がする。
そんなハイテクマンションなのに、少年の幽霊が、ある家族の娘にだけ見える。そして、次第に他の人にも魔の手が……。
舞台が今時っぽいだけで、やってることは古典的極まりない「呪われた家の幽霊」話。
メールに勝手に返信するあたりはAIっぽいとも言えるが、AIじゃなくても幽霊なら、昔から勝手に電話したりしてるけどね。
冒頭にもある、何故か2回繰り返す、時計塔から落ちる描写がよく分からなかった。

以下ネタバレ

中盤登場する黒人のおじさんが、『ファイナル・デッド』シリーズのメンター役の黒人みたいで、彼が名探偵なのかと思ったら、謎を解くものの、あっさり殺されてしまうのは、何やねん!? というところ。

ソルジャー・ドッグス


☆★

ジョン・ウーの初期作品。主人公は傭兵として、ベトナムだかタイだかの将軍を拉致するが、軍から追われることになり、命懸けの戦いを繰り広げることになる。
まあ、何のテーマもない、『ランボー』とか『コマンドー』というよりも、『デルタフォース』的な戦場アクションである。
R15ということだが、血のりは朱色で、全然リアルじゃないので、そんなに痛そうではない。まあ、クライマックスで、主人公が目の上下を縫われてまぶたが閉じないようにして、吊るされた上に背中に槍をつっかい棒にされるのはけっこう痛そうだったが。
こんなのを4Kリマスターする理由がよく分からん。

キリング・フィールド


☆☆

ハンバーガー・ヒル』みたいな映画を期待した私が悪いのだが、『アンダー・ファイア』みたいな映画だった。実話を元にしたという点でも、同作と同じ。
舞台は、カンボジア共産主義独裁者による国民の虐殺が行われていることからの命名だが、そこまで酷い感じは、クライマックスで川に流れ着いた白骨化した死体が並んでいるくらい。『アンダー・ファイア』との違いはあんまりない。後年の作品ではあるが、『ランボー 最後の戦場』内でのタイの軍の所業のほうがよっぽどヤバい。
手足がなかったり、負傷した民間人の描写は痛々しいけど。子供も、アメリカ人に無邪気にまとまりついたり、泣いていたりと、自由。、
本作では『アンダー・ファイア』では、内戦事情を取材しようとしていたのより後退して、カンボジア国内を、ガイドかコーディネーターをしている現地記者とのバディものとしての描写がメイン。後半の4割くらい(早送りしたけど(^^;))は、亡命に失敗した彼がカンボジアで捕虜として辛酸を舐めるシークエンスに費やされている、変なバランスの映画だ。本当は、そこへランボーばりに救出に行く悪戦苦闘がドラマ的な山場になるはずなのに、そこは一瞬で解決。