思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

レクリエイターズ ネイキッド(1)

☆☆☆☆

ふと深夜に見たテレビアニメで、「知ってたら最初から観てたのに」と地団駄踏んだ作品。途中から見るのも何なんで、結局見ずに終わった。
コミカライズは買ってたけど、途中からで終わっちゃうし(´Д`)
待望の、最初から「物語」を読む事ができた。
私の好きな「業界もの」であり「アニメもの」であり「メタもの」であり「SF」である。好きなもの全部盛りと言っても過言ではない。
唯一の不満は、キャラのネーミングが似ていて覚えづらいこと。セレジア、メテオラ、アリステリアと、主要キャラが全部「ア」段で終わるんだもん(´Д`)
各所にキャラ(ラフ/アニメのキャラ原案)の設定画を掲載してあり、作者コメントもあるのが嬉しい。
ちなみに、この上巻ではコミックス5巻までの範囲内で、ほぼ内容は同じだった。
マンガ用の脚本とほぼ同じなのか、テレビアニメ用に、より細かく描写したのかは不明だが、十分にアニメとしての画面や動きがイメージできる(原画が描けそうな)文書表現だった。
あと、コミックスの時点でずっともやもやしていたのが、「アリステリアは男か女か?」問題。アニメを観た人なら、百聞は一見にしかず、一聴判別できるのだが、キャラデザインも、セリフも、峻別しづらい。おもけに地の文でも「彼」「彼女」という表記がないのだ。ようやく出てきたのは物語全体の中盤(ラストまで読み終えてから書いているので、下巻だったか思い出せない)で、しかも先にも後も、一度だけだったんじゃないかなぁ。

カトマンズの男

☆☆★

ジャン・ポール・ベルモンド主演。
ラジオ『アトロク』でやってた、実は凄いアクション俳優というくらいしか知識がない。
物語的には、大富豪で、何でも手に入るから、意欲がなくなって自殺を繰り返す、というのが主人公。それが、一晩にして破産して、しかも自らに生命保険をかけられたことで、望まずして文字通り、命がけのスリリングな事態に巻き込まれる。
香港だかマカオから始まった舞台は、特に理由なくヒマラヤにゆき、ふたたび元の場所に戻る。
全編通して描かれるのは、チャップリン的なギャグと、バスターキートン的な(ちゃんと観た事がないので、仄聞から推測した限りで)体を張ったアクション。ジャッキー・チェン映画よりも、セリフや顔によるリアクションがなく、引いた画面で、サイレント映画的に映している。
引いた画面というのはギャグも同様。

ブラック・レイン

☆☆☆★

撮り方とか、物語のトーンとか、まんま『ブレードランナー』やん(´Д`)
松田優作、私的には全然格好良く思えなかった。田原俊彦似の、のっぺりした顔の平凡な男。ヘン顔の顔芸は、ブルース・リーのマネ? みたいな(^^;)
フード演出がちゃんとしてたなぁ。特に後半に向けて、二人でうどんを食べるシーン。

雨月物語

☆☆☆☆

これと名作とされている白黒邦画。
物語は、なんとなく『七人の侍』とか『隠し砦の三悪人』なんかの黒澤映画っぽい。原作は平安時代じゃなかったっけ?? それを舞台を戦国時代に移していることも、黒澤映画っぽい要因かも。

白黒ながら画面の美しさ(何が映っているかよく分かる)に惹かれて、見通すことができた。

関西人としては、近江の百姓の話なのに、関東弁なのには不快感があったけど(´Д`)

物語的には、『邯鄲の夢』系というか、二人の百姓のうち、片方は侍になって出世したい、片方は焼き物を売って金儲けしたい、という願望がある。それぞれが叶うが、『猿の手』や『浦島太郎』よろしく、皮肉な結末が待っている。
主人公の片方が訪れる女ばかりのお屋敷の主人は、能のお面が誇張ではなく、写実的であると気づかせてくれるほどの扮装。現代人の感覚では、全然美人には見えないほどのリアリズムだ(^^;)
権威ある映画祭で入賞するほどの面白い映画とは思えなかったけど、以前観た時は途中で挫折したので、そのへんは進歩したのかも……。

以下ネタバレ

猿の手』とは言っても、主人公は女房こそ野武士に殺されたものの祟られるわけでもなく(むしろ逆にあの世から同情される)子供は無事だき、隣家の男のほうも、妻が身をひさぐ商売に身を落とすが、そこから二人で抜け出して、二人で百姓として再出発できたんだから、全てを失っていないだけまだましであろう。

女賊と判官

☆☆☆★

有名なマキノ雅弘監督作品は初めて観る。
始のうちは、女盗賊が手前の屋根から下へ降りて画面から消え、下の道から現れるのを1カットで見せるなど、画面の手前から奥へなど凝った見せ方に、素直に驚いていた。
ところが、途中から大人向けと思われた要素が変わり、なんとミュージカル仕立てであることが明らかになる。それも、登場人物の心情をそのまま歌詞にした歌で、おまけに、それを本人が歌う。ミュージカルというより、幼児向けテレビのそれである。
物語は、ふと旅に出た片岡千恵蔵と、お上の手から逃れるために江戸を離れる女盗賊が、お互いに正体を知らずにツンデレ東海道中、という話。
ミュージカル嫌いの私としては、中盤以降、結構な頻度で挟まれるミュージカルと、後半に出てくるマセガキ/クソガキが鬱陶しいことこの上なかったが、白黒ながら画面の美しさ(何が映っているかよく分かる)に惹かれて、見通すことができた。
あとは、真っ暗な中にたくさんの御用提灯が浮かび上がり、それが迫ってくるなど、今見ても斬新な演出も随所にあり、監督の演出力を実感することができる。
あと、中盤あたりの旅籠に出てくる女中の啖呵というか、講談師はだしの立板に水のセリフは、現在の邦画では失われてしまったもので、これまた味わい深い。
個人的には、女優陣は好みの細面の人が多かったのだが、特に女盗賊と、もう一人の区別がつかなくて困った(^^;)

以下ネタバレ

当時の人は、常識として、分かって観るのかもしれないが、現代の私が予備知識なく観て一番驚いたのが、本作が『遠山の金さん』であったことだ。たしかと遠山とか金さんとかの名前は、クライマックスのお白洲まで出てこなかったんじゃなかったっけ?? 狙ってたのか、時代のせいでそうなったのか……?

U・ボート

☆☆☆☆

古典とも言える超有名映画で、しかも戦争映画なので、今更見るまでもないと思っていた。ふと思い立って観てみたら、これが普通以上に面白い。早送りする暇もなく観れた。
まずは、大戦中の潜水艦に詳しくない私から見たら本物、または実物大プロップを使ったとしか思えないUボートの、ドック(ドック内に数隻ある!)そして出撃シーンに度肝を抜かれた。ハリウッド大作でもないので、ミニチュアで当然であろうのに。さすがに航海中のカットは一部だけホンモノであとはミニチュア。といっても割と大きくて、『連合艦隊』の大和くらいはありそうだ。
潜水艦内のシーンになると、主役(の内のひとり)が艦内を案内されるシーンが、カメラが案内役な兵士を追って狭い艦内を奥へ奥へと進み、通路が狭いが故にカメラの目の前を人物がカメラ目線で次々に横切ってゆくところが『神々のたそがれ』とそっくり(であるが故に面白い)である事に驚いた。もちろん白黒ではあるが『神々のたそがれ』のほうがはるかに後年の映画なので、そちらが本作のカメラワークのオマージュというか、影響を受けているのだろう。これ、全て対象に対して俯瞰的な、引いた視点というのがなく、あらゆるものが観客の目の前にあるので、必然的に当事者意識と言う、緊迫感、臨場感が生まれるのかもしれない。
ディーゼルエンジンなども含め、ホンモノの潜水艦(先に書いたように、Uボートかどうかは置いといても)の迫力にあるれている。食料として、あちこちにバナナがぶら下がっていたり。
もちろん、潜水艦ものの定番の、安全深度以上の沈降や、水漏れ、酸素不足の展開もある。むしろ、ほとんどの要素が、『沈黙の艦隊』でオマージュされていると言っても過言ではないかも。
ミニチュア特撮だが、夜のジブラルタル海峡付近の港をバックに、キラキラ月明かりを反射する波間からゆっくり潜水艦が浮上するカットには感動した。

危険な情事

☆☆

このタイトルかつ家族ものでホラーってどういうこと? と思ったが、パーティー会場で色目を使う女が登場したところでもうオチまで読めた(^^;)
この不倫相手ってのが、私的にはアラフィフの不細工なおばちゃんにし見えないのだが、白人にはモテる顔らしい。『シティハンター』のトップモデル役もこの系統だったしね。
気軽に不倫してしまうと、文字通り命とりになる系の映画をひとつも観たことがなければ楽しめると思うが、2作目以降として観るべき斬新な要素はなかったと思う。

以下ネタバレ

不倫相手を風呂に沈めた後の仮死状態の白目っぷりが唯一の、他にない見所だっかな。
死んだと思われた彼女が浴槽から逆襲にザバっと出てきたら、その途端に奥さんが撃ち殺したのは胸スカだが、どうせなら頭を吹っ飛ばして欲しかったかな(^^;)
でも、いちおう色目を使ったのがおばちゃんのほうだったとはいえ、主人公のほうは罰がないというのはいかがなものかなぁ。女のストーキングで家族に危機が、というとこじたいが罰だ、といえなくもないのかも知れないけど。