思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『狼よさらば』

☆☆☆★

ブルース……。ウィリスのリメイクの記事を『映画秘宝』で読んで興味があったもの。大まかなストーリー以外の知識はない。
主人公のチャールズ・ブロンソンは、おばちゃんみたいな顔のおじさんだが、言わずと知れたスター(私はほぼ見たことがない)。
ニューヨークだかどこかで暮らすエリートサラリーマンだ。ある日、妻と結婚している娘が、チンピラ強盗に押し入られ、妻は死に、娘はトラウマまたはキチガイ状態になってしまう。
出張で訪れた田舎の土産として(!)拳銃を手に入れ主人公は、そこで試し撃ちして、射撃の名手であることを活かして、自らを囮に、夜な夜な襲ってくるチンピラ強盗を撃ち殺す。完全に必殺仕事人である(^^;)
警察が、これある程度、犯罪減少の効果を認めつつも、殺人犯として捜査を進めるあたりは、貫井徳郎『殺人症候群』あたりを思わせる(製作年代からして、当然、貫井氏がこの映画を念頭においたことは間違いないだろう)。
音楽がショボいというか、ちょっと的外れな感じなのが残念。
しがない中年男に「金を出せ」とやってくる街って、どこまでアメリカの治安は悪いんだ?! と思うが、アメリカ人的には、どこまでリアリティがあるのかなぁ……。
主人公とて、街中ゆえ悪党を撃ち殺したらすぐ逃げないといけないので、怪傑ズバットとか、バットマンみたいにスマートに退場というわけには行かず、なんとも不細工に現場を去る。そこにカタルシスはあまりない。

以下、ネタバレ

原題は『death wish』で、邦題は、主人公を逮捕した警部が、主人公に、この街を去れば逮捕しないこと示唆するセリフから。

『スケールアヴィエーション 2020年1月号』

☆☆☆★

筆塗り特集ということで、メチャクチャ期待したのだが、肩透かしを食らった感じ。
もちろん、田中流筆塗りDVDは凄く勉強になった。塗料がかすれるまで塗るとか、沈殿している顔料だけを、どれくらいすくうとか。でも、どうせなら、ローガン大名流の映像も、おまけでつけて欲しかったなぁ……。
最大の肩透かしは、誌面での筆塗りハウツーがほぼないこと。いつもと変わらない、途中写真しかないのだ。
低価格プラモ特集と同じく、SNSで作品を発表している若手モデラーの座談会は良かったが。

『ファイブスター物語(15)』

☆☆☆☆

マンガ夜話』でいしかわじゅん氏が言っていた通り、もっと画力があればなぁ……というコマが多いのが気になった。たとえば、G T Mが着地したところを膝上から収めたレイアウトがやたら多い、とか。もう少し色々な角度から見せて欲しい。せっかく色々なロボが登場し、設定画も未掲載なものも多い。設定画があっても、背面稿やアップ稿もないからね。
昔からのファンとしては、あのカンが本編で活躍しているだけで感無量である(^^;)(設定画が公開されてから、登場まで何年?20年?)
画力で言えば、ジークの中の皇帝の顔が一瞬垣間見えるコマがまた酷い(´Д`)新人賞落選レベルでしょ。夏目房之介氏が言ってた、同人誌以下とはまさにこういうのか。
ま、相変わらず永野デザイン世界を堪能するための一冊として楽しんでるけど。

『ゴジラVSビオランテ』

有馬治郎
☆☆☆★
角川文庫

ビオランテ』ファンとしては自分でも意外ながら、小説版は今まで読んだことがなかった。というより、存在じたい知らなかったかも。
どうやら、準備稿を元にしているようだ(ちなみに初版は平成元年11月)。スーパーX 2の形状の説明が、明らかに横山宏版だったり、三枝未希の名前が早坂未希だったりする。白神博士は「わし」「じゃよ」などと明らかに老人だし。
死亡率が低いことも特徴で、権藤、白神のどちらも死ぬ気配すらなかった(^^;)
ゴジラが復活するのが爆弾テロではなく気象条件に伴う火山噴火だとか、抗核バクテリアを奪還する時のアクションがヘリを駆使して派手だとか、自衛隊が割とあっさり発砲したりと、アニメっぽい演出になっている。その代表は、未希が英里加の思念を感じてビオランテを召喚する時の祈るポーズだろう。
細かいところでは、黒木(特佐階級ではない)の権力が弱めで、権藤が強め、というところにも注目。9 2式メーサー車も登場しない。の
あとは、ラストバトルがあっさりめ。エピローグに入ってようやく若狭到着で、残りの紙幅からして、第二形態にはならないのかと思ったくらいだ。
意外にも、ゴジラVSビオランテの決着は映画版と同じ。てっきり融合版かと思ったのだが……。
小説としてのテーマ的には、バイオ技術の恐ろしさ、映画でもしっかり描かれていた、初代ゴジラと共通する科学と人類の関係性について、しっかりできていた事に注目だ。
返すがえすも、『シン・ゴジラ』の演出で『ビオランテ』のリメイクが見てみたいなぁ……。

『日本国紀』

☆☆☆★
幻冬舎

日本通史には違いないが、著者が歴史家ではないということもあって、日本史に関するエッセイという印象がぬぐいきれない。
もちろん、西尾幹二や、渡部昇一両氏も専門科ではないながら通史を書いているのだが……。
各章ごとに参考文献を挙げてよ、と言いたくなった。
個人的には、井沢元彦のほうがいいかな……(^^;)もちろん、井沢氏の説についても、1、2回触れられるが。

「蒙古(略)軍はまず対馬を襲い、多くの島民を虐殺した。次に壱岐を襲い、(略)この時、蒙古軍は捕虜とした島の女性たちの掌に穴を空け、そこに縄を通して船べりに吊り下げた。」

「親らさ政策を取った高宗(大韓民国初代皇帝)は、漢城(げんざのソウル)にあるロシア領事館に匿われて政治を行なっていた。どこの国に、自国内にある他国の領事館に住んで政治を行う国家元首がいるだろうか。
 高宗はロシアに言われるがまま自国の鉱山採掘権や森林伐採権を売り渡した。それはかつての清国の属国時代よりもさらにひどい有様で、もはや植民地一歩手前の状態となっていた。この状況が続けば、朝鮮半島全体がロシアの領土になりかねず、そうなれば日本の安全が大いに脅かされる」

「はじめは朝鮮人の行動を黙認していたG H Qも事態を重く見て、昭和20年(略)朝鮮人が「治外法権の地位にないこと」を明らかにする発表を行なった。つまり、それまでは「治外法権」を認められていたことになる。」

通史なのに、メモがこれくらい、ということで、私的には、そこまでして読むべき1冊ではなかった。だが、20感を超えて現在も継続中の『逆説の日本史』シリーズや、江戸時代を中心とした『風雲児たち』も60巻オーバー、渡部昇一氏の10数巻の日本史シリーズすら読んだことのない人、近代史では林氏や中村あきら氏の著作を読んだことのない人向け、日本史そのものの入門者としてはうってつけの一冊と言えるかもしれない。
現代史のパートで繰り返し強調されている通り、米国の占領洗脳政策の影響下にある朝日・N H K及び戦後教育史観しか知らない人が、真実の歴史を知るとっかかりの一つとして、ベストセラー作家が書いた本ほど最適なものもないさも。

『マトリックス・リローデッド』

☆☆☆☆

再見。久しぶりに見ると、結構面白い(^^;)
普通の映画としては、ザイオン絡みの冗長さとか、問題はあるのだが、純粋にアクション映画としては、という意味で満腹感があるのだ。
見せ場と言える(これ以外にも、ちょっとしたバトルシーンは結構ある)アクションシーンを羅列してみよう。
(1)支那風の飲食店のテーブルでのマンツーマン素手カンフー……ごまかしのきかないシチュエーションだけに、相手のチャイナ系の人の動きのキレが良いことがどうしてもバレてしまっている。が、単なる腕試しで、実はキアヌより強くてもおかしくない、という設定で逃げ道が確保されている(^^;)
(2)いわゆる百人スミス戦……当時はマスクとCGを併用し、同じく人物が何十人も画面に登場して乱戦するシチュエーションだけで驚いたが、アクションそのものは殺陣そのものももうひとつだし、白昼ということもあってCGカットと実写、そしてスタントダブルとの違いがはっきり露呈した、残念(惜しい)シーンでもある。
(3)洋館階段上下の武器格闘……ここから一段グレードアップ。まずは最初のキアヌの両手での短刀回しからしてスピーディでメチャ格好いい。その後も武器を変え、階を変え、次々に繰り出されるアクション! カンフーアクションとしてはシリーズ中ベストと言って過言ではない。
(4)トリニティ対雑魚キャラ……スレンダーな四肢にシャープな殺陣が美しい。これはアジア人にはなかなか厳しいところだろう(>_<;)
(5)ハイウェイ・カーチェイス……オーストラリアに実物大セットを組んでまでした、本作の目玉。尺の長さといい、スピード感といい、迫力といい、バリエーションといい、ほとんど文句なし! ケチをつけるとしたら、車のボンネットに飛び乗るエージェントがCGであることくらい。逆に、バイクで逆走するシーンは、現在の目で見てもCGの車が混じっていることは殆ど見分けられない、手にあせ握る最高のシーンだ。
(6)トリニティの潜入……オープニングでも流れた、バイクから空中で飛び降りてぶつけるのを真上から捉えた構図がスタイリッシュ。片足を伸ばして片手をつく着地も良い。
これらのアクションシーンを眺めるだけでも十分に元は取れる(^^;)

『最後の脱出』

☆☆☆★

町山推薦。60年代のハリウッド映画だ。
公害の影響で、植物が枯れて行く謎の病気が蔓延し、秩序が崩壊して行く、ディストピアSF。確かに、1作めの『マッドマックス』とゾンビ映画を、合わせた感じ。導入や、ちょくちょく挿入される公害の、いわゆるライブラリー的な映像は、『ゴジラ対ヘドラ』みたい。
ちょくちょく挿入といえば、先の展開をフラッシュフォワード的に見せるのだが、べつに主人公に予知能力があるわけでも、最後に衝撃的なオチがあるわけでもない。単なる監督の趣味、あるいは演出の失敗?(なのに、町山さんは一言も触れていない(´Д`))
展開としては、『サバイバル・ファミリー』と同じ、家族が親類の家に向かう話だ。
町山さんは、倫理的にどうこう、と、しきりに言っていたが、SFとしては厳しい現実に、現実的に対処・適応する、という意味では、SF小説を、読むように楽しめた。何より編集のテンポかまうまいので、ぐいぐい引っ張られた。ただ、ラスト前の暴走族との戦いてま、急にダラダラ長かったのが残念。この後すぐ終わりならともかく、兄の家に着いたらまた一悶着あるのだ(´Д`)
復活の日』みたいなディストピアものとして、一定程度の面白さがあった。