思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

宮本武蔵 二刀流開眼』
☆☆
萬屋錦之助没後二十年」とあるが、出演欄に名前がないのはどういうこと?主演は歌舞伎俳優みたいだが、その人の屋号?そんな予備知識の乏しい中で見てみた。
本作の前後に続きがあるみたいなストーリーだが、(ことに本作が作られた昭和の時分には)誰でも知っている宮本武蔵なので、途中で始まって、途中で終わってもいいのかもしれない。
宮本武蔵がメインではあるが、佐々木小次郎高倉健!)が出てくるのに、武蔵とは顔は合わせるものの剣は交えないなど、余談が多い。このあたりからすると、逆に前後作はないのかも。宮本武蔵の映画に佐々木小次郎が出ないと文句が出るから出しといた、という。
それ以外にも、娘が身投げしたり、老婆が武蔵と戦ったり、本筋と関係ないエピソードが多すぎる。このへんも、その前後の因縁を皆が知っている、という前提っぽい。例えるなら、年末五時間ドラマ『忠臣蔵』の真ん中一時間だけ、あるいは『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』だけを見ているみたい。
面白かったのは、クライマックスで吉岡道場の若先生と対決。武蔵に左腕を砕かれた彼が、道場の評判を保つために小次郎に腕を切り落とさせるところ。顔面蒼白ながら鬼気迫る感じが凄かった。
アニメの特徴かと思っていた独り言が本作でもかなりあったのが興味深かった。



『秀吉の暗号(3)』
☆☆☆
秀吉の辞世には、奥に四重の暗号が仕掛けられていた。とは言え、財宝のありかではなく、秀吉死後の予言のようなものなので、その後の歴史を知っている現代人なら、なんとでもこじつけられる。
興味深いのが、本作の初出が書き下ろしであること。このあたりの過剰さは、デビュー作には作家の全てがある、ということもあるが、『二重螺旋の悪魔』や『ジョーカー』(書かれたのは『コズミック』よりこちらが先だったっけ?)を想起した。
以下、ネタバレ


「利休に影武者がいた(略)たしかに、日によって(略)たとえば手裏剣を懐中から持ち出し花を切ると、それを一輪挿しの投げ入れるなど、極端に作法が変わることを不思議に思った武将は何人かいたが、それも利休流の『わびさび』であろうと納得していたのでてる。」

このへんは本道の歴史ミステリの手法だが、それ以外はこじつけっぽい。作者の珍説を楽しむだけなら、この3巻の後半を読むだけで充分。