『カムパネルラ』
☆☆☆★
『イリュミナシオン』と同じく、作家SFシリーズと言っても過言ではないだろう。
主人公は宮沢賢治の研究者だった亡き母の遺言に従って、遺骨を散骨するために岩手に向かう。
ふとしたことから、宮沢賢治最期の年にタイムスリップ…?
しかし、彼が知っている年譜とはいろいろと違ったところが…。
序盤は、首切り殺人が出てくることもあって、SF設定ミステリーかと思いきや、それは単なる掴みで、メインは明らかにSFである。
以下ネタバレ
宮沢賢治作品の文体模写あるいは贋作的描写から、作風的に奥泉光を連想させる。しかし、なんでもありやん!?と冷めた気持ちになるのも事実。全体主義的な管理社会の設定は石持浅海っぽいし。
しかし、一見歴史改変ものかと思わせて、そうではないのが中盤からの展開。某有名映画や、作者の過去作を思わせる設定。
山田SFではテーマを提示してしまえば、結末は物語的に消化不良なことも多いが、本作ではすっきりとした結末。ただし、全ての風呂敷(設定)に説明をつけることはしていない。