思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『地団駄は島根で踏め 行って・見て・触れる<語源の旅>』わぐりたかし
☆☆☆★
光文社新書

一冊の本のために語源の由来を訪ねて30回近くも旅行しまくるなんて、贅沢というかヒマな……と思ったら、やはり雑誌の連載をまとめたものだった(「本の雑誌」連載)。
やはりネットは言うまでもないが、辞書を引くだけでも分からんことが、現場を訪ねることで見えて来るのだ。

ただし、「後の祭り」だけは結局、語源がはっきりしないのはどういうことか。まあ、それ(結局分からないこともある)もまたルポならではの味わい、ということなのか……。

「「相槌」とは、刀鍛冶が槌(ハンマー)を振るって真っ赤に焼けた鉄を鍛えるとき、向かい合った弟子が交互に槌を振り下ろすこと。師と弟子がリズミカルにトンテンカン、トンテンカンと相槌を打ってはじめて良い仕事ができる。(略)相槌の呼吸が合わないと、トンテンカンではなく、トンチンカンなことになってしまう。(略)そう、「トンチンカン」もまた、元はといえば鍛冶用語なのだ。」

「今西本店の「純正奈良漬」(略)最低三年、最長で一二年、気が遠くなるほどしっかり漬け込んだ本物の奈良漬けは、見た目は真っ黒、でも、味はまるくて甘くてうまい。室温四十度以下なら平気で二年はもつ。(略)漬け物が苦手な小学六年生(略)が、「なにこれ、美味しい!」と箸が止まらなくなった」
私も奈良漬けは苦手なのだが、これは食べてみたい。

「のろま」の語源である野呂松勘兵衛ののろま人形も、オトボケというか間抜けな表情で面白い。

地団駄は島根で踏め〜行って・見て・触れる《語源の旅》〜 (光文社新書)地団駄は島根で踏め〜行って・見て・触れる《語源の旅》〜 (光文社新書)
わぐり たかし

光文社 2009-03-20