大手法律事務所に入った新人弁護士が最初に手掛けた案件を描く。最初は離婚調停の相談だったのが、いつしか殺人事件の裁判に…。
法廷闘争の裏側で、独自に捜査するのは法廷ものミステリのお約束でもある。最後には意外などんでん返し(保険金殺人、愛人、虐待、そして…)もあり、作者の他の法曹ものと同じく、五百ページくらいの大作になってもおかしくない佳作である。個人的には、高木あきみつの『黒白の…』を連想した。
同期入社の4人がちょくちょく昼飯(残念ながらホカ弁ではない)に行って、近況(同じ事務所なので、当然社内の)を語り合うのがいい味を出していたのだが、法廷ミステリとして事態が緊迫してくる終盤にはなくなってしまうのが惜しい。ラストはそれで締めてもいいくらいだったのだが…。