思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

山陽電鉄神戸電鉄神戸市営地下鉄』☆☆☆★

プチ鉄で元神鉄ユーザーとしては買わない訳にはいかない一冊。
小さめだが、全駅の写真と概説を書いたもの。昭和初期の写真や地図などが載っているのが特徴。駅の写真は昭和中期から平成のものが多い。
見開きで2〜4駅ずつ紹介している。路線や車両の説明では他の本に劣るが、各駅紹介は全駅乗車をしているかのような雰囲気を味わえる。特に神鉄粟生線の西のほうは三木以降行ったことがないので興味深かった。


『イルカは笑う』田中啓文
☆☆☆☆
河出文庫

田中啓文の短編の魅力は、オチがSFか、ミステリーか、ホラーか、はたまたダジャレか、終わってみるまで分からないことにある。他の作家よりもひと要素多いのだ。プラス1のオトク感があると言える(^_^;)。
本書は『蹴りたい田中』と同系列のSF短編集。


『ガラスの地球を救え!』☆☆☆☆
アンソロジー『NOVA(1)』で既読。ホラーなんだかギャグなんだが分からないのに、何故か感動してしまうラストが面白い。タイトルだけでなく全編に手塚治虫への愛/オマージュあふれる作品。


『本能寺の大変』☆☆☆☆
本書随一の問題作。ネタバレが嫌な人はとりあえず読んでほしいが、あるジャンルの教養がないと、意味が分からないだろう。最後の脚註にも、解説にも直接の元ネタは書いていないし。個人的にはアニメ『妖刀伝』を想起したが、これも当然ネタバレ。

『イルカは笑う』☆☆☆★
古典的な設定のSFかと思わせて、豪快にひっくり返すバカ話。

『屍者の定食』☆☆☆
ゾンビの日常ということで、押井守『ゾンビ日記』と非常に近いものがある。そもそもがダジャレからの発想かもしれないが、よくもまあ、こんな話(オチ)を考えるものだ。呆れるやら感心するやら…。

『地の汗流せ』☆☆☆
タイトルを始め、「コンダラ」など、『巨人の星』のパロディが楽しいが、ラストはギャグと言って過言ではないスプラッターに。視点人物の正体にひとひねりあるのだが、これはこのジャンルではちょくちょくある設定なのだろうか?

『みんな俺であれ』☆☆☆★
医学的に補助脳を導入したところから始まるショート・ショート。終わってみれば論理的にこれしかないという帰結なので、意外性という点ではちと弱い。

集団自殺と百二十億頭の猪』☆☆★
エイリアンの精神的襲撃が、観光で自殺を体験するツアー、という設定が、まあ「出オチ」ものと言って良い。あとは単なるドタバタもの。

『あの言葉』☆☆★
パラレル日本のテロリストもの、というと真っ先に石持浅海が頭に浮かぶようになったが、まさしくそういう話。ブラックさはあるが、ミステリー的などんでん返しのインパクトは弱い。

『悟りの化け物』☆☆☆
語りの文体で、禅の入門希望者に高僧が語りかけるスタイルで、自伝的な話か…と思わせて、予想外の伏線を回収する結末が鮮やか。


まごころを君に』☆☆☆☆
読んでみれば分かるが、名作SF『アルジャーノンに花束を』を落語としてリメイク。短編にして…と言いたいが、実は同作も短編が最初(未読だが)。外国のオリジナルを江戸時代っぽくアレンジしているので、ネーミングはダジャレで処理しているが、そこも何故か感動に結びつくのが不思議だ。

『歌姫のくちびる』☆☆☆☆
解説にあるように、重厚なホラー。ホラーとしては定番なのかもしれないが、予告があるかどうかの違いで、展開としては『岸辺露伴は動かない』と同じである。人面塑という設定も『ジョジョ』っぽい。

『あるいはマンボウでいっぱいの海』☆☆★
これも落語。こちらは上方落語定番の「こんにちは」「こっち入り」で場面展開が進んで行くおなじみの口調なのが心地よい。話の内容じたいは『天狗指し』よりも『鷺取り』を『集団自殺…』的に展開した感じで、可もなく不可もなく。