思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

完全版
『白ゆき姫殺人事件』港かなえ
☆☆☆★

宮部みゆき『理由』や恩田陸木曜組曲』、『プリズム』『白光』などを連想。
取材の答えや手記など、一人称の断片のみで構成されているのが特徴。敢えてインタビュアーとの会話形式をとっていないことで、質問(されたであろう)を繰り返すなど、リアリティという点では不自然な点はあるが…。
最後にネット掲示板や週刊誌、新聞記事が載っているのが、最近のミステリーや、折原一を思わせる。面白いのが、奥付によれば、これらは本編が月刊誌に連載されていた同時期に、Webで公開されたこと。メディアミックスとしては面白いが、別にWebを見ないと手掛かりが分からないわけでもない。伏線というか、読み込んでいれば驚けるポイントは(ハンドルネームの発言者の正体や、意図など)いくつかあるのだが…。
最初に殺人があり、容疑者もすぐに上がっている(もちろん、どちらも三人称ではないので、百パーセント信用できない)。あとは、彼らの人となりが、関係者の語るエピソードから浮かび上がってくるのだが、どれも一人称なので、どこまで信用のおけるものか、が読者またはミステリーとしてのポイントになってくる。このあたりは『プリズム』っぽい。
最後には「当事者」として容疑者の手記で締められるので、事件の真相は、極端な話、一章と終章だけ読めば分かるという構成だ。が、まあそれでは何も面白くないだろうなぁ…。出来事よりも、その裏側や、それまでの人間関係を重視する、女性による女性のためのミステリーと言えるであろう。男にとっては、本格として、アンフェアではないが、美しさに欠ける構成に不満が残る(真犯人が最終章に唐突に登場するのがそれだ)。
人間関係や心理を描く「小説」が好きな人にはオススメ。ただし、後味は良くない。読んだ数少ない純文学では柳美里(読んだのは『ゴールドラッシュ』のみだが)が近い感じ。

…と思ったのだが、パラパラ最初から見返すと、初っ端から堂々と伏線が貼ってあった(^_^;)恐れ入りましたm(_ _)m


白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)白ゆき姫殺人事件 (集英社文庫)
湊 かなえ

集英社 2014-02-20