思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『機龍警察 未亡旅団』
☆☆☆☆★

ただでさえ面白いシリーズが、明らかにもう1ランクレベルアップした。
これまでの3作が龍騎パイロットたちそれぞれを主役にした紹介編だとしたら、本作では、それを前提として、脇を固め登場人物を複数同時に取り上げている群像劇である。
主だったところでは今回の主役とも言えるテロリストのカティナとシーラ、由起谷警部補、城木警視。
また、これまで最大の欠点とも言える、作品の真ん中に回想シーンがサンドイッチされる構成も改良されている。複数の主要人物にもれなく回想シーンがあるせいもあるのだろうが、過去のエピソードは自分語りだったり、あるいは断片的に挿入されることで、がぜん読みやすくなっているのだ。
また、クライマックスの戦闘が、毎回ラスボスが逃走するのを追いかける、という類似点も改良されている。戦闘シーンという点では、今回は自爆テロ、しかも少女というハードな状況。おまけに格闘戦にも長けているというので、緊迫感も桁違いだ。死傷者数もシリーズ最多で、もはや戦争と言っても過言ではない状況だ。
さらにさらに、小型であるが故に子供しか搭乗できないロボなど、ガジェットもてんこ盛り。
国際謀略ものとしては、中国、アイルランド、ロシアに続いてチェチェンと、これまた作者の引き出しの広さを見せつけてくれる。次はアフリカか中米か?
「敵」の正体も次第に明らかになってくる。ただし、単なる全てを操っている黒幕、という単純な話ではないのが本シリーズの凄いところ。敵は、あくまでもテロリストや国際情勢のきな臭さを利用して自分たちの権利を拡大しようとしているに過ぎない(と思われる)からだ。