思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ゼンデギ』グレッグ・イーガン
☆★

これまでの超こわもてのハードSFから比べると、ぬるい、ぬるすぎる。なのに長いんだよなあ…。
現代パートとも言える180ページはまるまるカットしてほしい(訳者あとがきによると、伏線というか、物語上のほのめかしや対照があるらしいのだが)。イラン革命をテーマにしたという点では新味があるが、それが面白いかというと別。
ネット上の仮想現実というと、リアルの「セカンドライフ」から、『アヴァロン』など、枚挙に暇がないが、主人公がガンで余命幾ばくもない、というあたりから、自分の人格(アバター)をネット上にコピーして、そこで死後も息子とコミュニケーションしようとする。
このあたりは『ターミナル・エクスペリメント』もそうだが、まんま『フレームシフト』だろう。『あなたのための物語』長谷(タイトルうろ覚え)とも似ている。
ただ、縷々挙げたどれにも、少しでも勝っている点がない。敢えて探せば、コンピュータ上の人格形成またはコピーについての技術的な描写くらいか。しかしそれも細部も細部の話。
良く言えばイーガン版『航路』を狙ったのかな?とも思うが、個人的には買って損したなあ…という感じ。