思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『オマル』
☆☆★
早川書房

宣伝などでは『ハイペリオン』を意識した傑作、ということらしいが、似て非なるものだ。
確かに冒険の途中でメンバーが身の上話をする、という構成は同じだが、プロットの説得力と各人の物語の面白さは雲泥の差がある。
そもそも遭難している飛行船の中でボードゲームをして、負けたら身の上話、という心理状態に大いに疑問を禁じ得ない。
飛行船に乗るまでのサスペンスは『999』や『タイタニック』的な雰囲気もあったが、メンバーがそれぞれ別れた卵のかけらを持つことの意味がもうひとつ分からなかった。
また、人間の他に全くタイプの異なる2つの種族が登場するのだが、地球の数百倍の広さを持つ惑星オマルに、なぜ人類がいるのか、など、明かされていない謎もいっぱいある。他の種族の問題は、単に作者が『リングワールド』の雰囲気が書きたかっただけ、というのが正解なような気もするが…。
これだけなら、単なる『ハイペリオン』を始め、名作のオマージュという名の二番煎じだが、最後に明かされるある謎によって星半分は割り増しされた。最後とはいえ、実際に直接図示までされて説明される数十ページ前には分かったけどね。これによって、気になっていた重力の問題などは納得できた。
蛇足だが、「オマル」ってネーミングで損してるよなあ…。「オマル・ハイヤーム」を連想するならまだしも、「お丸」しか思い浮かばない人も多いのでは…?
さらに言えば、遠未来の話らしいし、キリスト教の変形っぽい宗教が重要な位置を占める(このあたりも『ハイペリオン』っぽい)のに、アラーがどうの、というのにも違和感が…。

オマル-導きの惑星- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)オマル-導きの惑星- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
ロラン ジュヌフォール Laurent Genefort

早川書房 2014-04-10