思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『アヴァロン 灰色の貴婦人』押井守
☆☆☆★

単なるノベライズではない。映画版とは似て非なるものだ。
映画版の主人公アッシュは出てくるものの、終盤にガイド役として登場する。小説版の主人公は、傭兵としてアヴァロンをプレイする男。プレイの中で特A(クラスA)の存在を知り、そこへのミッションに挑む、という構図は同じ。映画版の裏側、というよりパラレルワールド的な構造。
小説版のメインは、押井監督の趣味全開の銃器の蘊蓄と、未来のディストピア的なネットゲームのディテールだ。舞台が日本であることも小説版の特徴。小説なら、異世界感も十分担保できる、という判断だろうか。実際、映画の印象に嫌でも引っ張られることもあって、ポーランドではないとイメージするほうが難しいくらいだった。
後半は駆け足というか、ラストバトル、というあたりで残り20ページくらいで、もっと書き込んで欲しかった、呆気ない感じもあるが、一応必要最低限の情報は記されている。クラスAの正体とか、映画版では分かりづらかったことも分かるのがありがたい。

アヴァロン 灰色の貴婦人アヴァロン 灰色の貴婦人
押井 守

エンターブレイン 2008-05-02>