思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『下戸は勘定に入れません』西澤保彦
☆☆☆★

連作短編集かと思いきや、一つ一つの短編の結果が次章に直結するタイプの長編。連作短編ともいいづらいし、何て言えばいいのかなあ…。
タイムスリップものだが、それには主人公が誰かと一緒に酒を飲んでいる必要があり、なおかつ同じ日付の、主人公が同じ酒を飲んでいた時にしかタイムスリップできない。まことに縛りがきつくて、実用性(?)は全くない(ま、タイムトラベルではなくタイムスリップだからいいのか)。西澤式SFミステリらしい設定と言える。
SFとして面白いのは、単純な過去の知られざる事実の有無による謎と謎解きではなく、因果関係が過去と未来を交錯して成立するところ。このへんは時間SFの真骨頂とも言え、本作が、ミステリーとしてはそれほど驚きを与えてくれないにしろ(娘の出世の秘密、というのは謎としては凡庸だし)、ミステリSFとして見れば十分、一読に値する作品としてオススメできると思う。

3/5~3/6
『雀蜂』貴志祐介
裏表紙アオリでラスト25ページの衝撃のドンデン返し、とあったが、一見、酔って寝ていた間に別荘に仕掛けられた雀蜂トラップから逃げまくるという、C級ホラー調の展開の裏に何があるというのか?
詠み終わってみれば、裏折原一みたいな感じに。確かにドンデン返しはしかけられているけど、これって読者が期待するタイプじゃないよなあ…。

雀蜂 (角川ホラー文庫)雀蜂 (角川ホラー文庫)
貴志 祐介

角川書店 2013-10-25