思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『レッドスーツ』ジョン・スコルジー著/内田昌之
☆☆☆☆
早川書房

原題は『redshirts』で、直訳なら『赤シャツ』になるか。
モチーフは私が見ていた『スター・トレック ネクストジェネレーション』ではなく、『宇宙大作戦』のほうなので、ちょっと「?」もあったが、言わんとすることは分かる。『宇宙戦艦ヤマト』の「第三艦橋大破」ってやつだね。

単なるSFテレビドラマのパロディかと思いきや、自分たちがドラマの登場人物であることを自覚して、反乱を試みという、メタミステリー的展開になるのが意表を突かれる。それだけならちょくちょくあるメタミステリーだが、本作がSFである所以は、登場人物たちがとった方法が、過去にタイムトラベルする、ということだったこと。
登場人物たちの過去に作られたテレビドラマの脚本を変えれば、自分たちが無意味に死ななくて済む、というのだ。おまけに登場人物はそのドラマの役者とそっくり、というからニヤリとさせられる。
彼らが取った、脚本を変更させるために取った方法は、いかにもドラマ的だが、まあ綺麗かつさっぱりあっさりと終わらせていると思う。
三種類のエピローグのうちでは、脚本家の苦悩を最終的に夢オチすれすれで処理した一人称バージョンが気に入った。