思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『数学を使わない数学の講義』小室直樹
☆☆☆☆

数学とは論理学の部分集合である。先に読んだ『ゲーデルは何を証明したか』を見れば本書のタイトルと内容の意味がよく理解できる。

「自分の解釈が絶対的に正しいとすれば、正しくない解釈をする者たちは、神との契約を曲解し(略)ているのであるから、悪魔の手先に等しい。ゆえに、殺してもよいどころか、むしら積極的に殺戮すべきだということになり、宗教戦争においては、できるだけ残酷な方法で、できるだけ多くの者を殺すのが正しい、ということになるわけである。」

「論理の世界というのは行き着くところまで行けば殺し合いにならざるを得ないのであるから、その意味だけでいえば、論理のない国である日本は、平和で幸せな、まことにめでたい国であると言えなくもない。」

「公理が仮説だとすれば、ある一つの公理系を置けば、その公理系に従って一つの数学が出来上がるし、また別な公理系を置けば、別な数学が出来上がるということになる。」
これは先に読んだ『暗黒整数』のベースとなった数学の考え方。

「常識的な考え方では、皆がいい人になれば、社会全体がよくなり、また、すべての人が平和を欲すれば戦争は起こらない、という意見が正しく見えても不思議はない。しかし、数学的論理に従ってきちんと検証してみれば(引用者注;アローの背理)(略)そんなものは嘘っぱちだということが、すぐにわかる。」