思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『新幹線を良く知る基礎知識』佐藤信
☆☆☆☆
イカロス出版

「深遠なるマニアの世界への第一歩」と副題があるが、何冊も鉄道本を読んだ私でも知らなかったことも多く、本当に一歩踏み込むための知識である。

100系は基本的に0系の延長線上にあり、いわば正常進化した車両といえるが、モーターの出力に少し余裕が出たことからオール電動車をやめ、(略)モーターを搭載せずに軽くなった中間車をなにか活用できないかということで考えられたのが二階建てということであった。」
どうやって二階建てにするかではなく、逆だったのだ。

300系は登場から10年と経たずに「こだま」へ大量投入されるようになり、東海道新幹線の高速化に貢献した影の立役者となった。(略)抜群の出足で後続列車から逃げまくり、「のぞみ」のダイヤ安定に大きく寄与した。300系がなければ、高密度で「のぞみ」と「こだま」が共存するダイヤ設定は不可能だったといえる。」

「700系の顔つきというのは、先頭車が最後尾になったときのことまで配慮したためである。(略)運転台の部分を垂直尾翼に見立て、下ぶくれの部分は水平尾翼の役割を果たし、二枚のハネによって、車両が最後尾に来た場合の振動・動揺を抑えようと意図したものである。」

VVVFインバータ制御をする車両では、先頭車は付随車にするというのは、いわば不文律になっていたのである。(略)先頭車を電動車にしてしまうと、(略)搭載されているATSやATCの車上子に影響して、信号トラブルなどを生じる危険性があるのだ。」

N700系では車体傾斜装置を採用しているが、(略)16両編成で400メートルの長さがあるので、前から順番にスムーズに傾けていく必要がある。時速270キロで走っているのだから、秒速すると75メートルで、約3両分のずれが出てしまうのだ。」
車体傾斜装置というと、全車両をまとめて傾けているのかと思っていたが、なんと前から順番に傾けているのだ。二両編成とかならともかく、半キロ近くあるとそうもいかないのか。ちなみに、ここにもあるように、本書にはちょいちょい誤植があるのが残念。

引用メモはあと三カ所あり