思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『「日銀貴族」が国を滅ぼす』と共通する内容だが、いわば上念氏の師匠筋の人物だけあって、より専門的に日銀のどの施策が悪いのか、高橋是清前の時代まで遡って論じている。
専門家以外の人は、読む順番としてはこちらが後で正解、といえる。

「長期国債の買い入れ増額はお断り、政府紙幣の発行も認めない。
 日本銀行はこれら(引用者注:バーナンキクルーグマンら)世界一流の経済学者たちの提案をすべて拒否して、なんの手も打たず、なんの責任もとらず、日本の中央銀行として居座っているのです。」

「1980年代後半のバブルの発生は、それまでマネーサプライの増加率を指標として堅実な金融政策運営を行っていた日本銀行が、急激な円高によって為替問題に目を奪われ、マネーサプライ増加率という指標を放棄してしまったことが原因といえます。金融政策上の大失敗といえるでしょう。」

「元日本銀行調査役でジャーナリストの石井正幸氏は、日本銀行がどのような金融機関や民間企業に天下りしているかを詳細に調べ、著書『日銀崩壊』(毎日新聞社)で公表しています。
 石井氏は「主要な天下り先の一つである短資会社などは、日銀職員にとって『子会社』と認識されとおり、日本銀行の人事査定では、政策実行能力よりも天下り先の確保に高い評価が与えられる」と指摘しています。」
孫引きになったが、要するに日銀の根本問題はここにあるのではないだろうか。日銀の給料をサラリーマンの平均給与÷失業率とすれば、日銀は一瞬でガラリと変わると思うのだが。

「円安誘導の為替介入が行われた場合、為替市場においては円をドルで買うことになるので、市場には円が放出されます。
 一般にはこの際、日本銀行は放出された円と同額の短期国債の売りオペ(市場操作)をすることで、市場から円を吸収し、為替介入の影響で貨幣供給が膨張することを防ぎます。
 これを「不胎化介入」と呼びます。
 しかし為替介入によって放出された円を吸収せずそのまま放置すれば、それは通貨の供給量を増加させるのと同じことで、金融緩和効果が生まれてきます。(略)
 (引用者注:2003〜2004年に実際に日本で行われた)非不胎化介入と量的緩和によって景気が回復する効果が見られたわけですから、そのことからも日本経済の長期停滞の真因が金融的な要因であり、積極的な金融緩和政策によってのみ解消可能であることが証明されたといえるでしょう。」


デフレ不況 日本銀行の大罪デフレ不況 日本銀行の大罪
田中 秀臣

朝日新聞出版 2010-05-07