思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『折れた竜骨』米澤穂信
☆☆☆☆
早川書房

魔法の存在する世界で起こった領主にして主人公の父親殺しの謎を書いたミステリー。
あとがきによると、本作はもともとデビュー前にネットに書かれていたもので、当時はハイ・ファンタジー、つまり完全に架空の創造世界の話だったものを、中世イングランドに変更してリライトされている。
が、これは失敗だと思う。ただでさえ馴染みのない舞台に、魔法、そして呪われた死なない一族まで出てくるのは、読者をいたずらに混乱させるだけだ。
魔法のなんてない中世イングランドか、魔法の存在する現代日本か、完全な創造世界ファンタジーのどれかにすべきだった。

とはいえ、本格ミステリとしては、単なる読者サービスまたは作者の自己満足に思えた登場人物の過去のエピソード、戦闘シーンなどが、謎解き場面で推理の俎上に上げられ、さらに意外な推理合戦/どんでん返しまであって、けっこう長めな小説に付き合っただけの満足は十分できた。
個人的には、真相に繋がる重要な伏線には気がついていたのに、この犯人に絞り込めず、残念だった。