以前、表サイトで全巻通しての感想は書きましたが、今回はそれからいろいろ政治・軍事の勉強もしてきたので、改めて読み解いて(?)行きたい。
ちなみに、画像・リンクは文庫版ですが、読むのは私が持っている現在絶版の当初の単行本です。
序盤は、初期のかわぐちかいじの画風なので、主にアゴ周りが貧弱なのが特徴。
しょっぱなから、音だけが頼りの潜水艦戦を見事に表した、音紋テープや解析のエピソードから始まっているのが見事。
日本の原子力船開発の歴史や、米軍太平洋艦隊の概要も1巻にしてすでに紹介している。
また、就航前に、海江田たちが自身での最終チェックを申し出て、そこで「やまと」という艦名を刻み込む。傷ひとつ許されない深海航行の潜水艦に傷を付けていいの?というツッコミはともかく、これが後々「やまと」が核武装しているかどうかの伏線になってくるのも見事な構成といえる。
逆に、深町や日本サイドは「やまと」が核武装しているという前提ではっきり会話しているのも見逃せないところだ。
沈黙の艦隊(1) (講談社漫画文庫) かわぐち かいじ 講談社 1998-03-11 |
初の実弾が米原潜に向かって行く、という緊迫度満点のヒキで幕を閉じた1巻の続き。
核攻撃の準備完了を通告する海江田。「核が最も効果を発揮するのは威嚇においてのみ」と、核兵器の本質をズバリとついた発言に注目。核武装の本質は、最初から最後まで貫かれた、日本人に対する警鐘・啓蒙といえる。
日米の思惑の違いも興味深く、現在でもまったく変わることなく、外交のテキストとして通用する(というより、20年経ってもまったく進歩がない日本の政治・外交のほうが困ったものなのだが…)
バッテリー室が漏水した時に、(?)塩素ガスが発生する、として対処させるなど、綿密な取材に基づいた情報をさりげなく入れ込んでいるのも凄い。
よく見てみると、週刊連載にしては、無駄なコマというか、背景(アシスタントだけで描けるコマ)が多いし、台詞のないコマがそうとう多い。だが、これは、ストーリーを考える時間稼ぎや、劇画スタジオとして、この作品以外にも同時並行で作品をつくるための省エネというより、本作が映画・劇画をイメージして作られていることが大きいと思う。キャラの描き方にしても、マンガ的というより、映画のスチールを重ねたような画面づくりになっている。動きがきっちりイメージできるのだ。是非ともそうやって映画を脳内再生してほしい。
沈黙の艦隊(2) (講談社漫画文庫) かわぐち かいじ 講談社 1998-03-11 |
自動車教習所関係のエピソードはあんまり面白くないなあ…。やっぱり島本和彦の恋愛ものはいまいちなのか…。
そのぶんというか、ガイナックス関係のエピソードはめっぽう面白い。あとは『ドラえもん』の新番組について。これ、旧『ドラえもん』アニメがどれくらいやっちゃったアニメか知らないと面白くないかも…。
アオイホノオ 5 (少年サンデーコミックススペシャル) 島本 和彦 小学館 2010-11-12 |