バベルの崩壊 - 思考の遊戯・続

11曲目。もう、私のiPod中でのベスト曲を出してしまいましょう。川井憲次ＣＤのベストともいえるサウンドトラック・アルバムで、全てが素晴らしい曲なんですが、中でも、これですね。

５分以上ある長い曲で、１分ほどある“ぶぶぶぶ”を除いても４分あります。この５分の中に８〜９ほどのパートがある複雑な構成です。ほとんど組曲といっていい充実ぶりで、もちろんその全てが画面に完璧にマッチしていることは（川井憲次担当の映画においては）改めて言うまでもありません。

ふつうならここまでシーンごとに曲調を変えず、音量調整で対応するところまでしっかり曲を描き分けるなんて、そうとうの自信と技量がなければできないことだと思います。単にシーンごとに変化をつけるだけでなく、通して聴いたときにひっかかりなく連続的に聞こえなければならない、という暗黙の条件があるのですから。

映画の中でのクライマックスなので、この５分の中でも緩急を付けながらも、しかし確実に盛り上がって行き、最後の１分くらいの盛り上がりは「映画みたいだ」という脚本家の伊藤典夫氏の評があるように、太鼓の連打に乗せた壮大なスケールで展開されます。おまけに1999年版ではここにコーラスまで入ってくるんですから……！

そう、この曲には1999年版があるんですが、個人的にはコーラスのないオリジナルがストイックな感じがして好きなんです。完成度はどちらも最高レベルなので、ほとんど好みの問題に過ぎませんが。