思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

プリズナーズ

☆☆☆★

ドゥニ・ヴェルヌーヴ監督作品。子供を誘拐される父親役の主演はヒュー・ジャックマン。刑事役ジェイク・ギレンホールはなんかあちこちに刺青があって、出てきた瞬間、こいつが真犯人? というくらい怪しいのだが、最後まで探偵であった(^^;)
原題も同じであるタイトルの意味は、複数人の囚人ではなく、囚われた人たちが散髪的、あるいは連関的に登場する話だった。
解説では、アメリカならではのキリスト教にまつわる宗教問題が物語全体に横たわっているのだが、それを知らなくてもサイコなリトたちの問題だと理解できるバランスになっているあたりが絶妙。
ミステリーとしても、序盤で容疑者が捕まって、証拠不十分で釈放されたあとすぐ容疑者がコロコロ変わっていくなど、最初から最後まで飽きさせない。
最初の容疑者アレックスが、ひどい拷問をされているのになぜすぐに吐かないのか、が映画(を引っ張るため)のポイントなのだが、同居していた老婆に何年も薬漬けにされていて、それが真犯人だった、という設定であるのがうまい。
ラストも真犯人に地下に閉じ込められた主人公が、笛で助けを呼べたのかどうか、というリドルストーリーで締めたことろもうまい。ただ、あそこに笛があるから、てっきり娘の死体もあるのかと思いきや、家の奥で薬漬けにされつ生きているという展開なのは整合性とれてなくない? 何のために笛だけわざわざあそこに入れる必要があるのよ?(´Д`)

『イノセンス』method 押井守演出ノート

☆☆☆☆
角川書店

映画『パトレイバー2』の膨大なレイアウトの意図を解説した名著『method』の、『イノセンス』版。
違いと言えば、最後にCG監督(?)によるいくつかの場面のメイキングが小さな画像つきでおまけ的に収録されていること。
もちろん、全映像作家必読の内容ではあるが、単純にいちアニメファンからすると、巨大ロボットだのヘリだの戦車だのがいろいろ出てきた前著に比べて、等身大のキャラがメインなので、内容にバラエティというかメリハリがなく、少し物足りなく感じてしまったのも事実。

ラリー・フリント

☆☆★

アメリカで、いわゆるヌードダンスホールや、ヌード雑誌を作り、風紀紊乱だと訴えられつつ、裁判で戦った男の実話を元にした映画。
テーマもそうだが、主人公が芸術家タイプでも哲学家タイプでもなく、はっきり言っていっちゃってるタイプなので、感情移入もできず、私生活でも裁判でも、言ってることが詭弁にしか見えなかったので、冒頭20分くらい以外は早送りで観た。

代表取締役アイドル

小林泰三
☆☆★
文藝春秋

売れない地下アイドルが、ひょんなことから大会社の社外取締役になり、ゴタゴタに巻き込まれる。
まあ、ラノベではありそうな設定で、『大日本サムライガール』なんかも連想させる。
SFでもミステリでもホラーでもないので小林泰三らしさはあまりなく、ブラックドタバタコメディで、田中啓文が書いたんじゃないかと思うくらい。ブラックというのはブラック企業ともかかっていて、ワンマンなバカ社長と会長がイエスマンばかりの会社を引っ掻き回す。平社員の身になって読むと、あまりにムカついて本を投げつけたくなるので(^^;)、植木等の『日本無責任男』みたいなコメディとして客観的に読もう。
展開としても、『大日本サムライガール』のようなラノベ以上のものがあるわけでもないし、野崎まど『タイタン』のように、仕事や会社に対する斬新な視点があるわけでもない。
そもそも主人公であろうアイドルはメイン登場人物のひとりに過ぎない、群像劇なのだ。それで、企業小説的な展開や法律の抜け穴や裏事情がないなら、読む必要ないではないか。

死霊のえじき

☆☆☆★

ロメロの、いわゆるゾンビ三部作の2作目か3作目らしく、ゾンビが街に蔓延し、地下に追いやられた小さなコミュニティを描く。ディストピアあるいは世紀末SF的な設定と言える。
ゾンビを家畜みたいに捕らえて生態を実験・研究したりするのが面白いところ。本作のゾンビは、最近の走ったり、明らかに獰猛で攻撃的な肉食獣、という感じではなく、朦朧とウロウロ寄って来る愚鈍な存在なので、本作のような真っ昼間や、地下でも照明の明るいところで見ると、全然怖くない。
怖さといえば、身体なバラバラにされるゴア描写が特徴だが、それとギャグっぽくも撮られているので、ポップコーン片手に観られる。
ヒロインにもあまり魅力がないが、前作とかを見てると思い入れもあるものなのかな?

旧エヴァ 追記

何故か(もちろん「気持ち悪い」を強烈に視聴後に残すためだが)真ん中にあるエンドロールがめちゃくちゃ格好いい。映画史上最高では??
『シン・エヴァ』を観たあとだと、内容はよく理解できる。クライマックスのシンジの決断の後にテレビシリーズのラスト2話が来るのだろう。
でも、だとすると、そこで自立して他者の存在を認めたシンジがアスカを否定する意味が分からず、そのピースだけ浮いてしまうのだ。

プレデター

☆☆☆☆

映画としては『コマンドー』より断然真面目に作ってるし、金がかかってるし、良くできてるし、面白い。SFアクション。
冒頭にはベトナム戦争的な兵器が色々登場。特殊部隊の任務としてジャングルに潜入する。最初は現地の民兵? とのゲリラ戦。ときおり被害者と、プレデター視点のサーモグラフィ的な映像が挟まれるものの、本体は一向に映されない。このへんはパニック、モンスターものの王道的構成。被害者は内臓が飛び出していたりと、結構グロい。リアリティあるバトルの結果によるゴア描写に期待する向きには、オススメ。
肝腎のプレデターだが、ほとんどジャガーとか野生動物のように描かれているのが面白い。
光学迷彩は、CGのない時代としてはかなり頑張っている感じ。『攻殻機動隊』(もちろん映画ではなく漫画のほう)とどっちが早いのかな?
映画としては、ホラーあるいはモンスター映画的な前2/3があって、部隊がシュワちゃん以外全滅してからは、『プラトーン』ばりの(いや、観たことないからイメージだけだけど)ジャングルサバイバルタイマンバトルになる構成。
その途中でプレデターがマスクを外すんだけど、外す意味がもうひとつ分からない。まあ、エイリアンだから理解できなくてもいいんだけど、好敵手であるシュワちゃんに敬意を表しているみたい。ラストで人間そのものの高笑いをしたり(お前は『北斗の拳』のキャラか?!)、つくりが東映特撮のスーツ的なこともあわせて、人間的すぎるのが、良くも悪くもプレデターの特徴だ。少なくとも私には、周辺のしっかりした真面目なディテールに比べて、プレデターのそのものの描写が、日本の子供向け特撮っぽくて、あと一歩、ハマれなかった。プレデターのデザインがターミネーターとか、エイリアンみたいなら、割と好きになっていたかも。
好きと言えば、本作の紅一点、現地の娘役のラテン系? の女性がめちゃ可愛い。少なくとも日本人好みのタイプ(ちょっと古いけど、マルシアっぽい?)。彼女は途中でどこか行っちゃったけど(^^;)