思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

肉弾

☆☆☆★

岡本喜八監督。ATGの低予算映画ということだが、白黒で画室も悪くない、戦前か、というくらい荒い映像(^^;) でも、きせずしてかか、半確信的に、それが大戦末期の物心共にの貧しさを表現している。
米軍の来襲に備える、ある地方部隊の一人の青年の物語。寺田農が演じる彼は、作中では20そこそこという設定だが、どうしてもおっさんのイメージしかないので、それもまた滑稽に思える。まるで塚本晋也監督&主演の映画のように。
インテリアゆえに、冷めた見方をする彼に、罰として裸で訓練所させられたり、任務の前にオンナを買いに行った時の「やっちまった」エピソードなどが描かれる。
最後には、冒頭に描かれた人間魚雷ならぬ人間機雷みたいになるのだが。
全体に、『沖縄決戦』なんかにあったような、悲壮感と悲劇の中の喜劇のようなトーンが支配する小品。
知っている俳優では、老人ではない天本英世や、相変わらず安定感のある年齢不詳の笠智衆なんかが出ていた。
途中で、砂丘に三人の従軍看護婦が出てくるが、そこからいきなり舞台調の張った声の、ハイテンポな台詞回しになるのがいきなり面白かった。それはしばらく続くのだが。この、三人娘がペチャクチャ喋るのは、雨宮慶太の『牙狼』(でオマージュされた)っぽい。