思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ブリッジ・オブ・スパイ


☆☆☆☆

映画館で予告は観たことがあるが、いくらスピルバーグ監督作とはいえ、地味だなあ、と見送ったもの。
改めて観たところが、これが凄く良くできてる。映画リテラシーがついてくるとよく分かる。
何気ない1カットでも、ちょっとずつカメラを引いたりして飽きさせないし、何より撮影が素晴らしく、非常に重厚感がある。
実話を元にした作品なので、ストーリーがどうとかは評価できないのかもしれないが、脚本的に無駄のない会話の配置はさすが。
特にトム・ハンクスが最初にしている会話で、複数の被害者がいる事故における保険の賠償金の件数のカウント方法。トム役の弁護士の心情性格を表すと同時に、終盤というか、本作のメインとなる捕虜交換への布石にもなっている。本作での、冷戦当時のCIAのみならず、現代の日本人から見ても無理筋としか思えない、1対2の捕虜交換を押し通す交渉術を信じさせる脚本の凄さ。
唯一の気になったのが、アメリカ人学生が東ドイツ兵に拘束されるくだりの、揉めているシーン。離れて見ている恋人のアップと、さらに彼女ナメのもめてるところのヒキのショットが順々に繰り返されるのが、見づらかった。
ソ連(大使館)や東ドイツのシーンなど、複数の視点、というのが、本作のテーマの一つなのかもしれないが。
そういう意味では、キーマンの1人でもある、捕虜となるアメリカ空軍の兵士のシークエンスは、選抜からU 2偵察機のお披露目など、これまた長く描きすぎ。いきなり偵察機撃墜シーンでも良かったのでは?
ミリオタ的には機体のアップとか、離陸シーンは良かったけどね(^^;) あとはベルリンの壁の警備にあたるT55戦車もわりと長めに映っている。ベルリンの壁といえば、ブロックを積んで(ドイツの民間人をそれこそ強制労働か何かで)作っているシーンが描かれたのも興味深かった。最初は道の真ん中にブロックを次々に積んでいて、「何やってるんだろう?」と思わせておいて、勘のいい人や中年以上の人は直後、そうでない人も観ていれば国の真ん中に壁ができるのが分かるという見せ方もうまい。