思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『小鬼の市』
駒月雅子
☆☆☆★

1作ごとに全く違った顔を見せるマクロイ作品。
本作は、第二次大戦中のスペインのとある島が舞台。食いっぱぐれの男が、ニューヨークの新聞社の支局長になるところから始まる。前任の支局長が死んだためだ。このくだりは、はっきり言って説得力ゼロ。真相が明らかになった後では、理解はできるのだが……。
そこから、彼が地元の通信社や名士、領事たちの間で、前支局長事件の謎を追ったりするハードボイルドもの。

本作はそのジャンル故に、トリックよりも実は「○○もの」というジャンルが明かされた時にこそ驚きがあるタイプの作品。

予断だが、43年の作品で、南京の虐殺を「満州族による」と正しく書いているのが興味深かった(志那事変前に起きた真実の南京虐殺のこと。
東京裁判史観では1937年に日本軍がやったと捏造された)。

小鬼の市 (創元推理文庫)小鬼の市 (創元推理文庫)
ヘレン・マクロイ 駒月 雅子

東京創元社 2013-01-30