思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『科学調査宇宙船ミラージュ7探訪記』
☆☆☆★

妙な本だ。タイトル通り、恒星間宇宙船が、様々な惑星を調査する。それだけ聞くと、傑作『ハイウェイ惑星』を思わせるが、なんと本作は一冊に六十のエピソードが詰まっている。裏表紙アオリにはショート・ショートとあるが、特に気の利いたオチは皆無で、悪意を込めて言えば、単なるネタ帳に過ぎないとも言える。
ひとつのエピソードが5ページ前後なのに、最初の二行と最後の三行にほとんど意味がないのも問題。定番の導入とサゲ、というつもりなのかもしれないが…。
また、人類の移住可能惑星を探すという目的上、惑星のデータが似たり寄ったりなのも、六十もの設定を読まされる身には厳しい。
出典がないが、ネット上で細々と発表していたものを本にした、というのなら納得が行く。
が、やはりせめて短編、中編にリライトして欲しかった。

また、ネタ元として『もしも月がなかったら』と重複するものも多く、同書を既読なら、敢えて本作を読む必要はない。

文句なく良いところを挙げると、カバーイラスト、という中味と関係ない点になってしまうが…。
ただし、以上挙げた問題点を含め、SFの奇書として、買っておくべき本な気がしたのだ。

科学調査宇宙船ミラージュ7探訪記 episodeI科学調査宇宙船ミラージュ7探訪記 episodeI
井原 道也

幻冬舎 2017-03-23