思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『あまたの星、宝冠のごとく』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア著/伊藤典夫・小野田和子訳
☆☆☆★

『アングリ降臨』☆☆☆★
ファーストコンタクトもの。火星でタコ型、というのがニヤリとさせられる。生きた神(印象だけの描写だが、高次の存在あるいは別種族として扱われている)がいる、というのも面白い。おまけに興味がなくなるとすぐ去って行く。

『悪魔、天国へいく』☆☆☆
落語『茶漬け閻魔』みたいなテイストで『失楽園』(もちろんミルトンのほう)をやった感じ。

『肉』☆☆☆★
隠喩に満ちた話。トラック事故の話の間に、孤児施設の話がサンドイッチされているが、どこかおかしい…。ミステリーとも取れる、孤児のパートは豚の擬人化?

『すべてこの世も天国も』☆☆☆★
作者の作風は、その諧謔さが落語や、山田風太郎を連想させるのか。夫サイドも新婦サイドも、お互い謀を巡らせる、他国との政略(?)結婚の話。

『ヤンキー・ドゥードゥル』☆☆☆☆
ヤク中の人が、それを抜くためになるどうゆう幻覚や身体・精神的ハードルを乗り越えなければいけないか、が体験できる。

『いっしょに生きよう』☆☆☆
テレパシーを使う異星人とのファーストコンタクトだが、これまた『ソラリス』を落語調に語るとこうなる、という感じ?
『昨夜も今夜も、また明日の夜も』☆☆☆

『もどれ、過去へもどれ』☆☆★
未来の自分と精神だけ入れ替わるというタイムトラベルものだが、まあファンタジーである。視点人物は過去ではなく運命へ行くほうにあるので、いわゆる運命論的な純文学の味わい。

『地球は蛇のごとくあらたに』☆★
地球に恋した、イタい女の話。これが月を擬人化したハードSFとかならいいのだが、そうはならないのが作者流。正体を明かした後で読んでいるからだが、本書を読む限り、黒人女性が書いている感じは十二分にある。

『死のさなかにも生きてあり』☆☆
これまた落語調の話。内容は違うが、『胴切り』を連想した。

あまたの星、宝冠のごとく (ハヤカワ文庫SF)あまたの星、宝冠のごとく (ハヤカワ文庫SF)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 影山 徹

早川書房 2016-02-24