思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『未来恐慌』機本伸司
☆☆

二千三十年ころ、ウェブ万博の目玉となる未来予想をスーパーコンピューターで行ったところ、経済問題からの破滅的な予測が出た。それをなんとか回避しようとする話……かと思いきや、ふとしとアクシデントで世界恐慌が始まり、それをなんとか修復する話。
大上段に構えたテーマを設定するのが、作者の持ち味。本作でも、人類にとっての経済とは、と大きく出た。ただし、内容は期限つきの世界破滅を回避するという、映画などではお馴染みの展開。直接的には『日本沈没 第二部』にそっくり。コンピューターシミュレーションを前にああだこうだする展開は、中期ホーガンに近い(もちろん本作のほうはラノベテイストで軽いが)。
いちおう経済の本も何冊も読んでいる私としては、本作で提示される予測も、解決策も、何ら目新しいものがなかったので、センスオブワンダーという点でプラスポイントがなかったのが残念なところ。世界恐慌予測も、浅井隆とか藤巻とか、ちまたに溢れてるし(読む価値ないので、未読の人には念のため)。
肝腎の恐慌修復策だが、中学生じやあるまいし、現実的には価値の未知数(限りなくないに等しい)のものに投資するアホはいないだろう。いくらコンピューターによる自動投資が普及した未来とはいえ……。
あくまでラノベとしてみて、中学生に対して経済の面白さを知ってもらうとっかかりにしても、本作を読むくらいなら、三橋貴明氏の入門書を読むほうが十倍面白くて為になるだろう。