思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『誰に見しょとて』
☆☆☆★

化粧をテーマにしたSFなんて、女性にしか書けないだろうなあ…。
縄文人が始め純粋に美のために化粧した場面から始まり、徐々に整形、身体障害へのサポート、鰓呼吸など、人体改造から、宇宙への適応まで、「シームレスに」連作短編としてつながってゆくのがうまい。
人類が化粧を始めた時点で、肉体改造、遺伝子操作まで、本質は同じ一本道の衝動によるもの、というテーマは、これはこれできっちりまとまっているが、惜しむらくは作中では否定されている「不死」や、「種としての進化」にまで筆を進めて欲しかったのが不満として残ったところ。

無添加を標榜していても安全性を鵜呑みにしてはいけない。添加物とは法律で表示を義務づけられている指定物質のことであり、その範疇でないものは危険性を多少指摘されていても微量ならば無添加だと言い張れるのだ。
純粋エキスなら安心かというと、そういうわけにもいかない。天然がすべて人間にとって安全ならば、極端な話、漆の汁や山芋の摺りおろしだって顔に塗れるはずだ。」

誰に見しょとて (Jコレクション)誰に見しょとて (Jコレクション)
菅 浩江

早川書房 2013-10-25