思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

外事警察麻生幾
☆☆☆☆
NHK出版

911後の日本の対テロ事情を、タイトル通り、外事警察を主人公に描いたもの。
何よりも、書かれている何倍もの取材がなされていることがひしひしと感じられるリアリティが凄い。厚めのハードカバーとはいえ、それにしては膨大な登場人物も全員にモデルがいるからかどうか分からないが比較的区別もつく。
麻生作品を読むと、戦後日本にも、自分の幸せを捨ててでも命がけで日本を守っている人たちがいるんだな…と思わせられる。
基本的にはなんでもかんでもミステリーに入れるのは反対なのだが、本作はあまりも伏線がはっきりしすぎとはいえ、先の読めない展開と、大小のどんでん返しなど、ミステリ好きにもお勧めできる。

「公安・外事とは(略)時代に流されるべきところではない。十年、いや二十年先に、再び、この国を危険に晒す者たちが復活するかもしれない、そのときのために、専門家を残し、資料を積み上げていないと、対応できなくなる」

「長官がこれほどまでに居丈高であるのは、周りから信頼されていない証拠だ(略)周囲から信頼されている者は決して威張らない。必要がないからである。」
「この国の安全を誰が守れる?自衛隊?出動さえできない?外務省?実行部隊を持たない奴らが泣きつく先は我々だ。内閣情報調査室公安調査庁などは問題外。内閣危機管理室はしょせんマニュアル屋。じゃあどこだ?警察こそがこの国を守るのだ」

外事警察外事警察
麻生 幾

日本放送出版協会 2009-09


四色問題
☆☆☆
たしかヒットした『フェルマーの最終定理』の少し後に出たはずで、内容も似たようなもの。
「どんな地図でも、四色あれば隣接する国どうしが同じ色にならないように塗り分けることができるか?」というのがその問題。
本書では、歴史的に誰がどのようなアプローチで取り組んで来たかが書かれている。
フェルマーの最終定理の比べれば150年前と歴史も浅く、どうも純粋な数学的証明とも言い難い。
いちおうの証明とされているものが発表されたのが1976年で、それはアルゴリズムや数学的な分類を経た上ではあるが、コンピューターを千時間とか使って計算したもの。それってほとんど総当たりと大差ないやん…。
しかも、その後も、シンプルでエレガントな証明は出てくる様子がない。
要するにこの問題は純粋な数学的なものではなかったのだろう。

なお、茂木健の翻訳に一つケチをつけたい。図(原文)にはrとかBとか書いてあって、本文(翻訳)には赤とか青とか書かれている。どっちかに統一しろ!(`ε´)

四色問題四色問題
ロビン・ウィルソン 茂木 健一郎

新潮社 2004-11-25>