思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『クロノリス』読了

ロバート・チャールズ・ウィルスン著/茂木健訳
☆☆☆★
創元SF文庫
『時間封鎖』の作者だから、危惧はしていたが、やっぱり水増しに継ぐ水増し。
2021年に、四十年後の年号と「クイン」と刻まれた巨大なオベリスクが突如出現する。
まるで『2001年』と『幼年期の終わり』を合わせたかのような魅力的な設定で、つかみはバッチリ。単なるタイムトラベルではなく物質変換で出現するので、温度変化など現出の衝撃波の破壊力が凄い、というあたりもニクイ。
それが最初はアジアの田舎だが、徐々に先進国へも出現するようになる。このあたりは、最後まで謎のままだが、未来でクイン軍と、世界の軍隊が壮絶な戦いを繰り広げ、更新国から順に陥落して行く…というような情景も想像させてワクワクしてくる。
結局クロノリスの正体が暗示させるだけではっきりしないところもうまいさじ加減と言える。
ただし、3部構成の真ん中は、主人公の家族が離婚したとか娘がどうしたとか、どーでもいい内容なので、ごそっと飛ばしても問題ない。
このあたりがホーガン的なところで、こういうのはSFじゃなくて、他でやって欲しいよなあ…。
これが人間ドラマを省いたプロットだけの中編なら文句なく☆☆☆☆だったのだが…。