思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

荒木飛呂彦推薦のホラー映画。
ドイツ映画だ。
別荘に殺人鬼がやって来る、というのは『13日の金曜日』からの(?)ホラー映画の定番だが、本作はごく普通の青年コンビ、というのが特徴。
アヴァンタイトルが長すぎるのも気になったが、何より最初に2人の青年が何のために来たのか分からなかった。別荘についた家族のシーンがあって、次には2人が門を開けて(もらって)家族と会話するカットなのだ。いちおう隣の別荘から挨拶に来た、ということで迎えたってことなのか??
そこからは悪意のないというか、サイコというか、狂った論理で家族をいたぶる場面が続く。
とはいえ、犯人たちのロジックすら最後までよくわからないのがいちばん怖いと言えば怖いし、映画の欠点ともいえる。
試写会で気分が悪くなる人、途中退席する人が続出した、というのはこの非常識というか常人の倫理や論理がまったく通じない精神的なひずみが怖いともいえるし、映画として破綻した大駄作と判断したのと両方じゃないかなあ…。
なにより、(荒木先生も書いている通り)時折見せるカメラ目線、映画の尺に言及したり、リモコンを使ったり(見た人ならわかる衝撃のシーン)と、メタ趣向が使われている意味が分からない。これはメタ的なトリックや構造トリック(ミステリ小説でいうメタフィクション叙述トリック)でもなく、単なるお遊びとしか思えないのだ。
まるで自主制作映画で、お遊びとして入れたカットの数々、という感じしかない。ということで個人的にはまるっきりお勧めできないなあ…。アメリカで監督じしんによるリメイク版が作られたそうだが、その意味も評判もまるっきりわからない。
あと、どうでもいいことだが、作中で犯人たちが妻の年齢を30代なかばだと予想するのだが、日本人の同世代の私からすると、どう見ても70前って感じ……。

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アミューズソフトエンタテインメント 2009-06-26

海江田・やまとと竹上・日本の首脳会談。軍事同盟の締結式でもあった。
36ページの防衛会議の
「やまと」がその50キロラインを越えて侵入してきた場合は?
との問いに幕僚長が
それは考えられないことです
とこたえているあたりが、アメリカサイドの「どんな状況にも対応できる万全のオプションを考え出すのだ」というのと好対照になっていて、よく日米の違いを表していると思う。(国家として当然なのはアメリカ式であることはいうまでもない)
あと、全巻読み終えて誰もが思うだろうが、41ページの「あなたにも家族がおありでしょう」という問いに対しての海江田の答え「妻が一人いる」はおかしい。何がおかしいかは最終巻のエピローグを確認してほしい。私の持っているのは初版だが、文庫版などでは修正されているのだろうか?
上陸後の海江田は黒い礼服ということもあってか、一段と格好よく描かれている。
絵的には121ページの異常に力の入った海原の顔も必見。
竹上の、自衛隊の指揮権を国連に預けるという提案は、小沢などが以前提案していた国連中心主義に似ているが、緊急避難的な対応であること、自衛隊の存在そのもは否定しないこと、などには注意する必要があるだろう。

沈黙の艦隊(9) (講談社漫画文庫)沈黙の艦隊(9) (講談社漫画文庫)
かわぐち かいじ

講談社 1998-05-11