思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

今ようやく気がついたが、タイトルは「裸の王様」のもじりだったのね…。
大右翼(褒め言葉です)の渡部昇一が戦後の首相を順番に解説する、語り下ろしの大作。
…のように見えるが、ビジネス書の体裁でゆったりレイアウトしてあるため、ズンズン読み進められる。翻訳本のように2段組でじっくり書き込んでもよかったのではないだろうか。いや、むしろそうすべきだったろう。
どんなダメダメ首相でもいちおうは功罪を述べているものの、あまりにも簡単すぎる。麻生首相を例に取れば、IMF融資など、経済対策における功績もあるのに、人事問題くらいしか触れられていないのだ。
メモすべきだったのは吉田茂時代の教育基本法の制定。
教育基本法教育勅語がまだ存在していた時期につくられたものなのです。したがって教育基本法には教育勅語に盛られていた「愛国心」や「道徳」といった徳目は記されていません。そうした徳目はすでに教育勅語に記されているわけですから、わざわざ入れる必要はなかったのです。ところがその後、教育勅語が廃止されてしまいます。すると「愛国心」や「道徳」といった条項がどこにも無い、ということになってしまった。二輪車のつもりでいたのが、“一輪車”になってしまったわけです。それが戦後教育に悪影響を与えることになったのはいうまでもありません。
 ここでひと言付記しておけば、占領軍も初めから教育勅語の廃止を望んでいたわけではなかったといわれています。(略)左翼勢力が(略)ご注進に及んだのです。」
ちなみに、私が覚えているのは中曽根首相から。その後は「こんなこともあったなあ…」とか、あるいは当時のニュースや新聞には載ってなかった(家でとっていたのは朝日新聞でした)事実が出てくるので、知らないことも知ってることも面白かった。
ただ、上述したように紙幅の問題などもあって本書単独では十分ではない。他の資料や、似たようなテーマの三宅久之氏の新書も読んでみようかね。

裸の総理たち32人の正体裸の総理たち32人の正体
渡部 昇一

フォレスト出版 2010-01-08