思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

何にでも首を突っ込んでくる斎藤孝はあんまり好きじゃないんだけど、本書の素晴らしさは認めない訳には行かない。

本書は、いわゆる速読法の本ではない。速読のための眼の動かし方トレーニング、なんてのはなく、かんたんに言えば「大人のための勉強法」というところか。

効率よく膨大な情報を処理するためには当然、時間を有効に使うためにたくさんの情報(本)をインプットしなければならない。
そのためには速読が必要になる、とうわけだ。

そのためのテクニックは、読む時に3色ボールペン(出た!)で書き込みをしたり、1冊読んだらA4用紙1枚くらいの引用やレポートを書く、ということ。

司馬遼太郎立花隆が資料を調べる時に使っている方法がまさにこれ、と言っても間違いではない。

齋藤孝の速読塾 これで頭がグングンよくなる! (ちくま文庫)齋藤孝の速読塾 これで頭がグングンよくなる! (ちくま文庫)
齋藤 孝

筑摩書房 2010-04-07

編著者の部分を見てもらったら類推できるかもしれないが、本書は一般鉄道ファンもある程度楽しめるものの、はっきり言って国交省の諮問委員会が作った論文のような内容である。
その専門的な内容の割には意外と売り上げランキングも高かったのだが、そういう官公庁や鉄道会社で教科書・参考書的に購入されているからではないだろうか?
ダイヤが乱れた時、我々一般乗客からすると、「何時間も経つのに乱れたままで、何やってるんだ?」とか、「どんどん電車を増便しろ」とか単純に思うのだが、それがいかに無知ゆえのことか、本書を読めばよくわかる。
簡単に言えば、事故原因の復旧の他に、他社・他線との接続の問題、運転手・車掌の勤務日程の問題、車検までの期限内での車両運用の問題、そして当然ダイヤの組み替えの問題などがあるのだ。
「台風や大雪などで列車の増延が見込まれる場合には、快速列車などの優等列車を運休することもある。これによって、本来なら待避するはずであった各駅停車の待避がなくなるため、待避のために設定されていた停車時間を遅延の回復にまわすことができる。さらには、列車本数自体を減らすことにより、単独列車の遅延が他列車に与える影響を少なくすることも大きな方針の1つである。」
真ん中の文章などは、なぜダイヤが乱れると普通ばかりになるのか、の答えとして分かり易い。
参考として挙げられているバス会社のスケジュールの組み方も面白い。
「予約状況を常に把握しており、2週間〜3日前までの需要予測、2日前、前日の需要予測、売れ行きにより、同時刻に2便を設定するなど、需要に応じた便数の増減を行っている。」
まあこれは、他との接続など、考慮要素が鉄道より少ないからこそできることかもしれないのだが…。
まとめとしてはこんなところか?
「運休などに伴って、車両運用、乗務員運用の大規模な変更も行う必要がある。すなわち、列車の運行に際しては、列車計画だけではなく、車両運用および乗務員運用が三位一体となって機能しているため、途中駅折返し運転によって運行している区間は、見た目状は通常ダイヤとほぼ同等であったとしても、車両運用や乗務員運用には大きな変更が加えられることとなる。また、普通区間が運転再開して、列車の時刻は平常ダイヤに戻ったとしても、車両の滞泊場所が異なってしまったり、当初想定していた車両の走行キロをオーバーすることにより、車両検査計画を変更しなくてはならないといった事態に発展することもある。」
(車両の滞泊場所とは、翌日の始発電車などのために車両を前日に移動しておくこと)

鉄道ダイヤ回復の技術鉄道ダイヤ回復の技術
電気学会・鉄道における運行計画・運行管理業務高度化に関する調査専門委員会

オーム社 2010-08-06

確かにけっこう凝った構成やトリックを使っているのだが、本格ミステリ大賞になるほどの作品か??よほどその年にはまともな本格がなかったのか?と疑いたくなる。
純粋に作品として比較すれば、三津田信三の某作品とか、某女性ミステリ作家(すぐに思い出せない…)とか、似たような構成の作品はいっぱいある。
なにより、同じ作者の『骸の爪』のほうが遥かに良いでき。
もちろん、本作では(とっかえひっかえ視点人物が変わるのが特徴だが)主人公の一人が少年ということで、読みやすい、というのはあるのかもしれないが…。

シャドウ (ミステリ・フロンティア)シャドウ (ミステリ・フロンティア)
道尾 秀介

東京創元社 2006-09-30