思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)第六大陸〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)
小川 一水

早川書房 2003-08
売り上げランキング : 169881

民間企業が月面基地(正確には結婚式場!)を建造するにはどうすればいいのか?ということを追求したハードSF。
そのシミュレートの徹底ぶりは、アメリカから訴訟を起こされたり、スペースデブリの掃討を宣伝のために行う、というようなところまで及んでおり、面白い。
動機が突拍子もないところだけに、妙の父との確執なんかがSFファン的には邪魔っけだが、仕方のないところか。
泰や八重垣のような理系の技術者たちのドラマのほうが好きなのだが。
伏線はあったとはいえ、ラストになってエイリアンの存在が浮かび上がるのは『楽園の泉』なんかと同じ。明言されてはいないけれど、これと『前哨』はどう見てもオマージュである。(ミステリではよくあるが、本作だけに限らず、SFでは前例となるSF作品について作中で触れられることは滅多にないのが不思議。現在の延長である未来なら、それらの存在は既知のはずなのだが…。パクリであることを認めたくないのか?)
手放しで大絶賛とまでは行かないのだが、紛れもなくハードSFの佳作であることは間違いない。SFファンなら、表紙に騙されることなく読んでみてほしい。