思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『SPIRIT/霍元甲』

素晴らしい!
これならジェット・リーが「武術映画の全て」という主旨の発言をしていたのもうなづける。

ジェット・リー映画ファンなら分かる出演作であらすじを。
『太極神拳(大地無限2)』〜『方世玉』〜『烈火風雲』〜『マスター・オブ・リアルカンフー』〜『ファイナル・ファイター/鉄拳英雄』〜『フィスト・オブ・レジェンド 怒りの鉄拳』〜『英雄』
という感じ(^_^;)メチャクチャヤナ…
アクロバティックな娯楽アクションというより、いち映画としてのまとまりが素晴らしい、武術映画。
名匠・ユエン・ウーピンによるアクションも随所に入っていて、もちろんアクション映画としても面白いが、それ以上に、武術とは何か、というテーマを鮮烈に描ききった傑作である。
ジェット・リー出演作としても、代表作として『英雄』と双璧となるであろう。ただ、あちらがあくまでもチャン・イーモウ映画としてのカラーの1ピースだったのに対して、こちらは紛う方なき、ジェット・リー主演作品である。

音楽は気づかなかったが、『LOVERS』と同じ梅林茂。リリカルな側面が薄い(女性の登場人物/尺もかなり少ない)ために男の世界、という感じなので、太鼓を主体にして印象に残る、格好いい曲になっている。帰りにサントラ買った(^_^)V

アクションの見せ方も、ワイヤーも使っているが、『グリーン・ディスティニー』とも『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』なんかとも違う、『フィスト・オブ・レジェンド』の延長上にあるような、生身のアクションを補強するような、地味だが確実な効果を上げる方法をとっている。

カメラワークも、再生速度を一瞬ストップモーション気味にしたり、はたまた早回しにしたりと、いろいろと凝っている。山のような筋肉男・オブライエンとの試合では、リングから放り出されそうになったところからロープを使って戻ってくるところで『ロミオ・マスト・ダイ』的なモーフィングも使われていたようだ。

とりあえず冒頭からいきなりクライマックスの異種格闘義戦から入り、
3連勝、たっぷりと華麗なるジェット・リーのアクションを見せることで、
つかみは完璧。
中村獅童との対戦を前にして、一気に過去へと遡る。
まあ、べつに順番に見せてもいいと思うんだけどなぁ…。
こういう構成は、ちょっと一般客を意識しすぎじゃないか?
まあ、このへんが香港カンフー映画というより、普通の映画らしさを感じさせる部分でもある。

傷心のジェット・リーが田舎で生命を取り戻す情景描写なんかも、
カンフー映画らしからぬ部分。チャン・イーモウ映画でいえば『初恋のきた道』のような感覚だ。

中村獅童は、とうぜん本格アクションはできないわけで、どうするのかと思ったが、
やっぱりスタントダブル。
ジェット・リーを前から写し、中村獅童を背中越しに写すシーンが多い。
荒っぽい突きのシーンなんかは本人が演じているが。
回転するシーンなんかでは、スタンドがやっているのを顔面をぼかして処理。
せめて『ザ・ワン』みたいにCGはめこみで中村獅童の顔を載せるなりしてほしかったなぁ…。
クライマックスなだけに、興ざめ(T_T)

最後は、ジェット・リーの気高さも出しながら、
なおかつ『フィスト・オブ・レジェンド』のような悪役日本人ではなく、
(もちろん倉田保昭という素晴らしい日本人も描かれていたが)
日本人の良いところも出ていたのが良い。

ラストは、ジェット・リーの幻影が田舎で心を通わせた盲目の女に見える(=ジェット・リーの魂?)という、美しく、なおかつスパッとした終わりかた。

欲を言えば、小さい時からの修行シーンが欲しかった。
子供の時にケンカで負けていらい、いきなり最強になってるからね。

エンディングがHIGH & MIGHTY COLORというのでドッチラケだが…。
やっぱり荘厳なインスト曲で締めるべきだよなぁ…。