思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『映像の原則』富野由悠季
☆☆☆☆
キネマ旬報

富野監督による絵コンテ、演出論。
演出・監督希望者やアニメ関係者のみならず、これまた映像演出に興味のある人全てに読んで損のない一冊。
「正義の味方は左から入ってきて、右からきた悪漢をやっつけて、勝ったときに左に向いて右手に立ち、本当に強い人になる。」
この、カミシモの概念は、基本中の基本ながら、はっきり知らなかった(^_^;)
「その人物(キャラクター)にあった演技としての”歩き”と”走り”は容易に達成できない、と警戒したほうがいいものです。(略)”あの走る演技は良かった””あの歩きは良かった”という評価はまずありえません。」
「映画は冒頭の5分で全部見せろ」
「”とりあえずレイアウトを出す”という作業が定着したことで、演出家やアニメーターから、カット全体の芝居を創作させる能力を奪ってしまったという側面があります。
 その結果、一枚絵のようなカットがつづくアニメ、コマ・マンガの羅列のようなアニメを作るようになってしまったのです。」
「セルは3コマ後tに1枚変えても、背景の移動は1コマごとで撮影しなければならない」
「発声が自然体すぎると、声が画面の後ろのほうから出ているように聞こえます。」
「無音状態は(略)昔からやっている方法は、スタジオ内に数人の人を入れておいて、動かさず喋らさず音のない状態を録音して使ったものです。」

鈴木丈織『工場のメンタルヘルス』を読む

印象に残ったところ

「ストレスは責任感の強い現場リーダーほど感じてしまう(略)メンタルヘルス不調を防止するために、「よし」の三原則を活用させましょう。自分を無条件に信頼し、信念を自覚し、「決断のパワー」を簡単に意識づけできる口癖です。
(1)「よし。できる」(略)
(2)「よし。やってみよう」(略)
(3)「よし。もう一度」」

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(上)』富野由悠季
☆☆☆★
角川文庫

30年ぶりに再読。ハイジャクから始まるのは覚えていたが、南洋の観光地での小競り合いは完全に失念していた。ケネスがペーネロペーパイロットではなかった、とかも、ケネス=シャア、パイロット=ギュネイ、というところ。実際、冒頭のハイジャクのシーンなど、『逆襲のシャア』を観ているかのようだ。
最近のスパイ映画さながらの展開や、テロリストの親玉が堂々と白昼で活動している、という先見性が凄い。
ギギという少女の二面性は、小説ならでは。
ガンダムマニアとしては、グスタフ・カールが、現在のデザインとまるで違うのに驚いた。当時は、ジェガン系のヒョロっとした体形だったのに、いつのまにかジェスタを超えるフルアーマー状態になっている(@_@;)

松下幸之助「成功する力」』大西宏
☆☆☆
実業之日本社

項目別に分けているので、重複が多いが、松下幸之助の言動への入門書としては良いのではないだろうか。
逆に何冊か既読の人には、改めて薦めることはないなぁ……。

ゲーマーズ ハイ!』
☆☆☆
双葉社

雑種の増刊号ということだが、次は出たのだろうか?15年発行の本を図書館で借りたのだが、書店で見かけた記憶がないけど……(^_^;)
内容は前に読んだファミコンゲーム本1巻と2巻を合わせたような感じ。
凄いのは、50ページを費やしてファミコンソフトを完全カタログ化していること。さすがに内容紹介しているものは半分以下だが、それにしても凄い。まあ、凄いのは協力したコレクター「酒缶」氏なのかもしれないけど。
ちなみに、ファミコンだけでなく、セガもハード一覧と一部のソフトの紹介が載っている。
一部のソフト紹介は、ファミコンも含め、文量が少なすぎる。記事としての面白さは物足りないが、ファミコンの資料(総覧として、深く調べるためのとっかかり)としてはこれさえあれば充分では?

『老眼のウソ 人生をソンしないために』平松類
☆☆☆★
時事通信社

「見にくいのを放置しておくと認知症になりやすい」

「メガネの度数を合わせるのは「お昼前後」がベスト」

「老眼の(略)目薬(略)箱の後ろの成分表にシアノコバラミンと書いてある(略)これがピント調節に作用する」

『殺意の構図 探偵の依頼人』深木章子
☆☆☆★
光文社

『鬼畜の家』よろしく、弁護士の元に、弁護の依頼が来るところから始まる。友人の紹介で、実父の放火殺人の疑いで逮捕された男の弁護をすることになった弁護士だが、被告の主張には明らかにおかしいところが……。
公判中に新事実が発覚し、アリバイが成立したことで無罪となる。
ところが、被告の妻が公判中に別荘で死亡したことに続き、被告も釈放後に死亡する。
結果的には、過去の人間関係という昔話が多いことによる時間の経過もあって、エピローグの時点で、登場人物表にある13人中、6人しか生きていないという大量殺戮っぷり。
中盤からは、視点人物を変えて事件を振り替えるという構成で、『白光』か『プリズム』的なある種の多重解決ものと思ったが、最後にはちゃんと1つの真相に帰着する。
ただし、本格としては、ある程度常識の範囲内かもしれないとは言え、ある種の専門知識が決め手になること、後だし的な事実が出てくるので、本格としての投げられ感は減点された。
三作めを読み終えたが、この作者、古き良き、一族の相続をめぐる連続殺人ものを、自身の経験を活かした弁護士ものとして再構成したいのだろう。だからこそ、異常に人間関係の愛憎劇のパートが多いのだ。

以下、ネタバレ

真犯人像や、シリーズ探偵の意外な過去のエピソードはなかなかニヤリとさせられる仕掛けだった。
まあ、一人の真犯人というより、複数の思惑が交錯し、誤解がかばい合いを生む、というのが本作の醍醐味であり、(好き嫌いの分かれそうな)ややこしいところ。私的には、小説としても嫌いではない。最初に挙げた貫井ちゃんテイストもあるかな。