『プロローグ』
☆☆★
本当は評価不能、としたいくらい。
とある理系作家が小説を書こうと試行錯誤するさまを描いた私小説とも、円城塔お得意の単なる実験小説とも言える。
感想も、思考実験、思弁SFが好きな人は楽しめるかもしれないし、ただの駄文、小説家のエッセイだと本を投げたくなる人もいるだろう。
私はと言えば、両者の間を行ったり来たりし、どちらかと言えば後者に近い着地であった。
…と、こんな文体で、明治の口語体小説や昭和のテイストあふれる文体なのも特徴。
最近のミステリー作家でも、奥泉光や京極夏彦のような、やっぱり古式ゆかしい作家の文体に似ている。
何故か勅撰和歌集の言語分析スクリプトを書いてみたり、章ごとに作者の分身となるキャラクターを創造して対話したりと、メタミス好きには楽しめる要素はいろいろある。
内容からすると、タイトルはむしろ『プログラムに小説を書かせる方法』とかにしたほうが良いかも。そもそも小説のプロローグといえる内容ではないし。
プロローグ 円城 塔 文藝春秋 2015-11-24/td> |