思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『妖怪大談義』京極夏彦
☆☆☆★

民族学者から作家まで、バラエティ豊かな対談集。相手も掲載誌もバラバラである。

「『大江戸化物細見』の図説細見で、「豆腐小僧」が詳しく紹介されていますが、(略)豆腐を持っているだけの妖怪。何の怖さもない。」

なるほど確かに史実上の実在の妖怪だったのか。

「本来、不思議な術なんてものは全部インチキなんですよね。僕らは古来、それを承知でつき合ってきたわけで、いわば必要悪だった。闇を担う人々は闇にあるべきで、いかがわしくあるべきなんです。」

「ゲームと現実は違うはずだと思いたい、それを確認したいという気持ちの表れなんじゃないか。ゲームでは簡単に人が死ぬ。でも実際の死はもっと重たくて荘厳であるべきだ。だからこそ本当に人を殺してしまったら、何かものすごいことが起きるのじゃないかという幻想を抱いている。(略)やったから何が変わるかといえば、変わらない。(略)アリを踏みつぶすのと実はそう変わるものではない(略)そんなことは考えるまでもないことで、それがやってみないとわからないんですよね。(略)人を殺すことに対して過剰に幻想が膨らんでしまっているんじゃないか。
だから僕はむしろ、ヴァーチャルな死を見せることより、現実の死を隠蔽してしまっていることの方が問題なんじゃないかと思うんですよ。」


水子の霊なんてものはない。でも、子供を流してしまった人の悲しみというものは厳然としてある。そこで便宜的に人権の範囲を拡大してやる。(略)それで人が救えるなら嘘でも詭弁でもかまわんだろうという姿勢は、心の領域を扱う分野では正しいと思う。」

いずれも対談相手ではなく、京極氏の発言より。