思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

1000ページ。辞書か!?っての。
本題が始まるまで100ページもあるなど、老教授の脱線多数の講義、という感じ。脱線(日常生活や他の分野とも思えることの関連性)こそ学問の楽しさ、という意図もあるのだが。
「数学概論」ならぬ「数学大全」的な内容かと思いきや、タイトルの虚数の解説が終わったところで、後半は虚数実学ともいえる物理に移ってしまう。それもいわゆるガリレオピサの斜塔実験から、宇宙論まで行くのだ。ブルーバックス5冊ぶんの内容が詰まっているといっても過言ではない(本書中で引用されているフォントは異常に小さいし)。
どうせなら著者の数学の集大成として、行列とか、そっち方面にも触れてほしかったところだ(物理に行かず)。
序盤こそ、中学生でも分かると思うが、中盤からは普通の数学の本のように数式による計算ばかりになり、理系かつ高校生以上でなければかなり手ごわいだろう。私は、「判別式」のところで、なぜそれが出てくるのかどうしても理解できなかった。数学者は、よく証明の途中で説明が必要な手順を省略したりするから困るんだよなあ…(´д`)そういうところが数学嫌いを増やすんだぞ!(そういうのに反対する主旨の本なのに)

秋の夜長に読むどころか、読書に慣れていない人が、まともに全ページ理解しようとして読むと、1年くらいかかるのではないか。
まあ、じっくり味読するタイプの本であるから、それくらいがっぷり四つに数学の世界を咀嚼し、堪能するのが正しい本書への接しかただろう。

「初めから(略)「最小公倍数を見つけよう!」などと考えるから、面倒くさかったり、却って間違えたりするのである。慣れるまでは、単純に分母同士を掛け合わせる事で、共通分母を作るべきである。」

「或る出来事が必ず起こる場合、「その確率は1である」と云い、パーセント表示では「それは100パーセント起こる」と云う。何故にこの様な幼稚な注意が必要であるかというと、どうやら巷では、「必ず起こる、それ以上の事」が存在するらしく、「私は120パーセント、それを信じる」だとか、「200パーセントの準備をした」だとか、極めて奇怪な表現が罷り通っているからである。基準値を設定する為に、折角1や100といった切りの好い数字を上限として、対象を表しているのに、そこへ範囲外の数値を持ち込み、何やら意味のない事を強調して一人悦に入っている様は、滑稽以上に哀れである。諸君は、少なくとも正式の場所では、こうした稚拙な”強調表現”は用いない方が宜しい」
全く同感で、ここは著者も多少過剰な嫌悪感(侮蔑感)を表している(^_^;)

「四十八文字を重複無く一度だけ用いて、一体何首の俳句が可能であるかを計算してみよう。(略)1509687361581479577649152000となる。

虚数の情緒 中学生からの全方位独学法虚数の情緒 中学生からの全方位独学法
吉田 武

東海大学出版会 2000-03