『荒野に獣慟哭す(下)』夢枕獏
☆☆☆☆★
徳間ノベルズ
まさに描き切ったというにふさわしい大作。
進化あるいは変態というテーマに、ジャングルでのサバイバル、そして作者お得意の格闘技など、全てを詰め込んである。
宿敵・薬師丸法山を倒し、京子を救い出してハッピーエンド、というような単純なラストではないのもSFらしくて良い。
全く完結する気配のない作者のライフワーク『キマイラ』を待つまでもなく、この作品にその全てがあるではないか!
たった単行本2、3巻でしっかり完結してるし。
読み終えてみると、タイトルの意味もはっきりする。まさにこのタイトルに向かって、ある種、破滅への物語であったのだ。
唯一の体裁としての不満は、これでも分厚すぎることと、せっかくこの時期に出すんだから、イラストはマンガ版を描いた伊藤勢(天才!)に任すべきだった、ということだ。
荒野に獣 慟哭す 下 (トクマノベルズ) 夢枕 獏 徳間書店 2011-08-31 |